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嘘の鏡合わせ(8)
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「綾斗。」
階段の踊り場で、久しぶりに聞く声に驚いて振り向くと、会いたかったけれど、会いたくなかった人物がそこにいた。
「あ、タツ...久しぶり。」
「お前、乞い乞いに手を出したってほんとか?」
幼馴染の斎藤竜也は、久しぶりに会って早々、焦った様子でそう、問うてきた。
「こいこい?何だそれ?」
訳が分からず聞き返すと、少し困った顔をして言い直す。
「...変な呪い(まじない)にハマってるって本当か?」
「...そうだけど。」
肯定すると、肩を掴まれて言い聞かせるような低い声が返ってきた。
「今すぐやめろ。その道具を今日取りに行く。いいな。」
その言葉が、彼から発されたのだと理解した時、無性に腹が立った。何故綾斗がお呪いにハマったのか、抜け出さなくなったのか、その元凶の癖に一方的に否定して来たことが許せなかった。悲しかった。悔しかった。
「待てよ!は?意味わかんないんだけど!?」
斎藤の手を振り払って大声で怒鳴る。
「アヤ...?」
「久しぶりにあったと思ったら、何だよ!意味わかんない事一方的に言ってきて!優秀な楽師様だから偉いってか!?結構仲いいと思ってたの、俺だけ!?なんでなんも教えてくれねーんだよ!正月休み終わってから、1回も連絡返してこねーじゃん!・・・何とか言えよ!」
力任せに飛びかからうとしたけれど、自分より一回り大きい斎藤に躱された力は、勢いを失うことなく、階段を転がり落ちた。
「あ、綾斗!!」
本当は、久しぶりに声が聞けて嬉しかった。
こんなはずじゃなかったのに、気がついたら病院にいた。
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