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次の日はお客様の予定も多く、竜さんとの雑談もなかなかできなかった。竜さんはとても仕事を楽しそうにこなす人で、見ていてとても気持ちがいい。
常連のお客様にも、天気やスポーツのたわいの無い話を振ったりと、営業マンでもおかしく無い様子だ。
見習わなくてはなぁと思いつつ、要も取り次ぎを頼まれ内線をかけていた。
忙しい時間にさしかかり、竜さんと手分けをして取り次ぎと入館のICカードをお渡ししていると、
「ちょっと、あんた。私はここの自動車保険を利用してるものなんだが。」
何だろう‥‥スーツじゃないから一般の方かな‥‥。
中年の男性がいらした。
「はい、御用をお伺いいたします。」
「事故のあったときの保険金の支払いで、おたくの会社の対応が納得いかないんだ。電話でカスタマーセンターに電話しても、ちゃんとした人が出てこないしな。偉い人と話がしたくて、直接本社まできたんだよ。だしてくれ。」
えっ、どうしたらいいのかな。なんか怒ってるしクレーマーってこと?でもうちの会社の対応が悪かったんだもんね‥‥。
竜さん!って思って横を見たら、竜さんも接客中で質問できる状態じゃなさそう。
どうしよう‥‥‥。
「おい!聞いてるのか!!お前の会社、どうなってるんだ!!」
男性が詰め寄ってきた。
やめてっ‥‥。
「いま総務に問い合わせいたしますっ。」
「総務だぁ?そんな雑用係りさんじゃねぇーんだよ。役員出せ、役員!」
男性が再度近づこうとしてきたとき、
まずいっ、息がっ‥‥‥‥
やばいっ‥‥‥‥あっ‥ ‥‥‥
はっ‥‥‥‥はっ‥‥‥‥過呼吸だ。
竜さんに言わないと、と思ったまま忘れていた。最近起きてなかったし大丈夫とも思ってたんだ。
はっ、はっ、あっ‥くっ‥あぁ‥‥く‥はっ‥‥‥‥‥‥‥
「おい、お前、ふざけてるのか?!」
その時、
「お客さま!ソファでお掛けになってお待ちください!!わたくしがただいまお取り次ぎいたしますので!!」
竜さんの頼もしい、凛とした声が聞こえた。
はっ‥はっ‥‥‥‥
くはっ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
うぅ‥‥‥‥‥‥‥うぅ‥あぁ ‥‥‥‥‥‥‥
苦しさから涙が溢れそうだ。
竜さんはすでに誰かに内線を掛けている。
「くそっ、総務は会議中なのか?!だれも内線にでないな‥ なら‥ ‥
ピピピ‥ あ、すいません黒枝さん。受付の柏原です。ちょっと今、美波が体調不良ですぐに医務室に連れて行って頂きたいんです。はい‥総務は駄目でした。内線に誰も出ないんで会議中かも。いま俺も来客で手が離せなくて‥すみません。お願いします。」
小声で話す竜さんに申し訳なさが募る。
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