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引越しは思っていたよりも うんと早く終わった。それもそうだ。衣類と本が入った段ボール数箱とこの身体だけなのだ。
荷ほどきもすぐに終わり、リビングで珈琲を飲む。
「樹さん、自宅の申請って会社にどうしたら良いですか?」
「あぁ、そうだね。この住所で提出して。」
樹さんはテーブルの上に住所の書かれた紙を置く。
綺麗な字‥‥‥‥。
「あれ?この住所ってこのマンションじゃないですよね?ご近所だけど。」
「あぁ。投資用に幾つかマンションを持っていてね。そこは今空き家だからしばらくきみに住んでもらってることにしようかと。郵便だけそちらに届いてしまうけど、徒歩でもすぐだから簡単に取りに行けるよ。」
「えっ!?投資用のマンション?樹さんってお金持ちだったんですか!?」
「はははっ。そんなことはないよ。父の遺産でマンションを買って、賃貸に出してるだけさ。あとは株もやってるけどそれはまずまずだね。生活はちゃんとお給料の中でやってるさ。足るを知る、だよ。」
「そ、そうですか。驚きました‥‥。あっ、でも僕、家賃は半分払うつもりだったんですけど!」
「必要ないよ。ローンも残ってないし、きみはそういうことは気にしなくていいよ。
さぁ、じゃあ夕食を食べに行こう。今日は蕎麦屋だよ。」
‥‥‥‥‥いいのかな‥‥。僕、男として不甲斐ないよね‥‥‥。
「ほらほら、もうこの話は忘れて。いつか出世払いしてもらうよ。」
「はい‥‥分かりました。樹さん、お蕎麦好きなんですか?」
「馬鹿だね。引っ越し蕎麦だよ。」
「あっ、なるほどなるほど!樹さんって本当に外国育ちですかぁ?」
「外国育ちでも、両親は日本人だからね。もちろんイギリスには蕎麦屋なんてないけどね。」
樹さん‥仕事もできてお金持ちだったなんて‥これは知ってたら女性社員が今より騒いでモテるだろうな‥。僕‥‥僕もお金貯めて、樹さんの誕生日には何かプレゼントしようっ。
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