アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
117
-
「樹さんが来てビックリしましたよっ‥なんで言ってくれなかったんですか!」
タクシーが捕まらず歩いて帰る事にした。電車もまだあるけどどうにか歩ける距離だし、何より酔い覚ましの夜の風が気持ちいい‥‥。
「きみだって柏原くんと食事、としか言ってくれなかっだろ。俺こそ白鳥顧問に、受付嬢と共に食事に行こうって誘われて驚いたんだぞ。出向いたら既に酒まで飲んでて。罰、うけたい?」
「ばっ‥!!付き合いです!!大して飲んでませんっ!!酔ってません!!!」
「ははっ。分かってるよ。白鳥顧問、ああやってたまに誘ってくれるんだ。あの人、優しそうに見えるだろう?仕事になると、かなりの曲者だよ。」
「そ、そうなんですか?」
「目標をもて。切り捨てることを怖がるな。良くそう教えられた。」
「切り捨てる‥?」
「何かを手に入れるためには何かを犠牲にしなくてはならない時もあるってことだよ。足るを知れって。手の中にある物で満足しろってことさ。」
「そうなんですね‥‥。」
樹さんの肌が恋しくて手を繋ぎたい‥‥‥けど外でそんなこと出来るわけもなく‥‥。
すると、手首を掴まれて樹さんの腕に持っていかれた。
「腕に掴まってろ。手は繋げないけど、腕に掴まるくらいなら平気さ。もし見られても酔ってるきみを送ってるってことで言い訳つくさ。
‥‥‥。 白鳥顧問の会社、関連会社だけどかなり業績伸びてるんだ。待遇もいいのに、本当に良かったの?」
僕は樹さんの腕をぎゅっと掴みながら歩く。
「うん。迷いはないです。役員秘書には興味あるけど‥今は受付嬢で頑張るって決めてたから。あとは‥樹さんと同じ会社で働きたい。」
「そうか。」
「僕、知ってるんです‥。掌の中には沢山の物は残せない。残ったものだけを大切にしないといけないこと‥。足るを知るなんて大層な考え方じゃなかったけど、自分に与えられた立場や運命ってあると思うから。」
「運命か。そう言うの信じてる?」
「信じてる。信じてないと生きて来られなかったから。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
117 / 321