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あれから非通知の内線は何日か続いている。しかも必ず竜さんがいないお昼休みの時間に‥。
気味が悪く恐怖すら感じるものの、出たらすぐ切れるだけで実害もなく又、為す術もないのだ。
勿論、竜さんと青森次長には報告した。青森次長は色々と手を尽くして調べてくれているようだが、社内システムを細かに調べてもどの端末から来客予定が消去されてるか分からないとのことだった。内線もしかりだそう。
とりあえず実害が無いのだし、事態が収まるまで様子見としか対策がなかった。
それでも案の定、樹さんは僕のことを心配してくれた。
「柏原くんがいない間にって‥完全にきみへの嫌がらせじゃないか。悪いが正直ここまでの事態は想像していなかった。うーん、きみ‥やっぱり専業主婦になったりしない?」
夜、同じベッドに入り手を繋ぎながら眠くなるまで過ごす。セックスしたいけど昨日もしたし‥それに明日は朝早くから旅行に出るのだ。樹さんの胸に顔を埋める。
「しませんよ〜。僕だって男だし‥。働くの好きですもん。」
「専業主婦だって立派な仕事だよ。きみ、いつも掃除や料理も頑張ってくれてるだろ。このところ帰りが遅いのを言い訳に任せ過ぎていたと反省していたんだ。」
暗い部屋の中で目を凝らし樹さんを見ると僕を心配してるのが分かった。
キュッと胸が痛くなる。それは‥嬉しさから来た興奮だった。
駄目‥だめだよ僕‥心配されたがるのはもう止めたんだから‥
それでも心配されると樹さんから大切にされているのが感じられ、どこか安心する。樹さんの手を強く握ると急に放された。
「あっ‥‥って痛っ!な、何するの?」
おでこをピンッと弾かれて驚く。
「きみ、今心配されることに心地よさを感じていたろ。心配されることで俺からの愛情と自分の価値を測るな。」
「ご、ごめんなさい‥。」
「まぁでも今回は俺のことでこうなってるから心配と申し訳なさもあるよ。ただ分からないんだ。もし仮にだ。俺への好意がある人間の仕業だとして、こんな事をしても何にもならないはずだ。しかもそういう特別な好意を感じる相手が思いつかない。青森だけじゃなく黒枝さんにも頼んだのだが、来客予定が消されてる件で可笑しな動きをしてる端末機がないそうだ。彼女、もともとシステム開発統括部にいたから詳しいんだよ。」
「そうなんですね‥。」
樹さんは手を離したまま考え込んでしまう。
「樹さん‥僕なら大丈夫です‥危害を加えられてる訳じゃないし‥大丈夫な気がして‥。」
「駄目だよ。はぁ‥このまま家に閉じ込めておきたいくらいだ。」
心配そうにする樹さんに嬉しさが募り、僕はそっと慰めるような優しいキスをひとつ落とした。
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