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85 不安
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田中さんと車に乗ったのは退院以来だ
懐かしくおもう外の景色に見とれていると、見覚えのあるバスケ部の先輩や快と同じ制服を着た生徒が何人もバラバラになって歩いている姿が見られた
「予定より卒業式が早く終わった見たいですね。それにしても快様のお姿が見られませんね」
車から見て人の顔は見えにくいが、群れている男子生徒の中にも快がいる様子は一つもなかった
買い出しにいく店まで車の窓ガラス越しに外を眺めていると、カップルが楽しそうに歩いている
何故かそのカップルに目を引かれ車が横を通り過ぎても見入ってしまった
あの後ろ姿とあの髪型、そして女と笑顔で歩いているのは、紛れもない快の姿だ
やけに帰りが遅いと思ったらこのザマかよ
まぁ結局お互い男な訳だし...結果的に女の方にいくのがオチだろ
なんてむしゃくしゃしていると、田中さんに声をかけられる
「あの...?蘭夢様?大丈夫ですか?」
「あぁ?...ッ...いや?え?なにが?」
あっぶねぇ、明らかに田中さんに八つ当たりするような口調で返事をしてしまう
「貧乏揺すりが酷いですけど...?」
「あははは!ごめんごめん」
なんで俺はこんなに動揺してるのだろうか
お互い好き同士かと勝手に思い込んでいたのは俺の方だった
快は俺と遊びで好きと言って監禁していたのか?だとしたらあの2人はいつから...そういう関係なのだろう
「蘭夢様ー!店に着いたので一緒に行きましょう」
考え事をしていたらいつの間にか、買い出しのためにきた店に着いていた
田中さんと一緒に野菜を選んでいても快の事ばかりでまともに田中さんと会話が成り立たない
今日のご馳走も快のためって田中さんと協力して作っていたのに...何だか複雑な状況になってきた
心のどこかで、俺の勘違いだと思いたいところだが、あんな状況で見てしまったのだからもう取り返しがつかない
レジで会計を済ませすぐに車に乗ってまた学校の前を走行している
見たくも無いものを見てしまうのはもう嫌だったため、車のシートに頭を置いて目を閉じた
「起きて下さい」
聞き覚えのある声で目を覚ますと、もう家に着いていた
「あ、俺ねちゃってた...」
重たい瞼を擦り、車から降りる
ずっと胸がモヤモヤしていて気持ち悪い
快は帰って来るのか、帰って来たらどんな顔すればいいのか
今日のご馳走は、あとさっき買ってきたサラダを盛り付けをして快の帰りを待つだけだった
もう6時を回ろうとしているのに快は帰ってこない
卒業式なんて午前中に終わるはずなのに...
首を長くして待っているとリビングに置いてある固定電話が鳴り、素早く田中さんが受話器を手に取った
「あ〜、、そうでしたか...分かりました。伝えておきます」
険しい顔を浮かべながら電話を切ると、田中さんは俺を見た
「あの...快様が、今日の夜ご飯はお友達と食べて来る見たいでして...蘭夢様によろしくと言われました...」
何だろ...今日は負の連鎖だ
快にも沢山友達がいて、しかも今日は卒業式もあった訳だし、最後の別れをって事でパーティしたり、飲み会をしたりするものだ
それを俺が否定する権利はどこにも無い
だから、とても悲しいし、寂しい
「そうなんだ...んじゃ2人で食べちゃおうよ!!どーせ快はあっちで楽しくやってるんだろうし!」
せっかく作ったご馳走をまさか作った本人達がたべるなんて...
「そうですね。それでは頂きましょう」
2人は向かい合わせになり並べられたご飯を無口で食べた
自分で作ったはずなのに、こんなにもご馳走があるというのに、ちっとも美味しくはなかった
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