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88 不安4
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まるで快は赤ん坊の様に俺の胸に頭を置いて、ずっと泣いていた
右手にはちっとも力が入らない俺は、ただ左手で快の頭を撫でるしかなかった
突然泣く声が聞こえなくなったと思ったら、すっかりもう寝てしまっている
何があったかなんて詮索は快がちゃんと話せるまで、聞かないようにしようと思った
快は俺を抱きしめたまま、寝てしまったためこのまま寝室に運びたい所だったが、肩に包丁が刺さっているためあまり俺も動けない状況だった
取り敢えず体を起こそうと左腕を床について力をいれて起き上がろうとすると何かの拍子にまた元の位置に戻された
床に着いた手を見ると、酷い出血を物語っていた
田中さんに連絡を仕様にも固定電話からはだいぶ遠くて到底無理だ
そんな中、快の制服のポケットに触れるとスマホがあるのに気づく
すぐ手に取り、田中さんに電話をした
『もしもし。どうかなされましたか?』
「あ、ごめん。蘭夢です」
『もしかして?!快様になにかありましたか?!』
「えっとまぁ結構酷い状態だから、来てもらっていいですか?」
『すぐ向かいますから!!』
そう言って一方的に通話を切られてしまった
今回の件は、浮気とか、喧嘩とかそんなレベルではない
快の身に何かが起こっているのは確かだ
いつも助けてもらっている分、これは俺が助けなければならない
玄関の扉が開いたと思うと、走ってリビングに来た田中さんがいた
「これは一体?!」
「あの...取り敢えず快を先に」
「しかし、蘭夢様も酷いお怪我をされ...刃物が刺さっているではありませんか?!!」
この状況で1番パニックになるのは分かるけどまさか田中さんがこんなに驚くとは誰も想像がつかなかった
「俺はいいから、早く快を治療して上げて」
田中さんは不安な表情を浮かべながらも快を寝室に運んだ
俺もこの包丁をどうにかしようと起き上がると、何故か視界が歪み、床へ強く叩きつけるように倒れてしまった
腹部の当たりに重みを感じて瞼を開けると啜り泣く快がいる
「何で泣いてるの?」
俺はただそう呟くと、俯いていた顔を上げて目を大きく見開いた快がまたボロボロと声を上げて泣き出した
「らんっ...ごめん...ごめんね...っ」
「快が無事で良かったよ...俺も全然平気だし。だから泣かないでよ」
いつもの快に戻った喜びと、無事だった事に安堵している
快は俺を強く抱きしめた
「くるしっ...かい!!怪我人だぞ!」
「ごめんごめん」
2人で顔を合わせると自然と笑が溢れてその場はいつもの雰囲気に戻った
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