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それから開店時間までの間、掃除の仕方やオーダーの取り方、片付けの仕方に簡単な飲み物の作り方を一気に叩き込まれた。今までバイトを取らなくて正解ですよ狐塚さん。俺じゃなかったら、みんな初日で辞めてる。
「手先は器用なんだな」
「あ、やっと褒めてくれました~?あとその顔、どうにかなりません?まだ狐塚さんの笑顔が見れてないから見たいな~なんて」
「あぁ?お前と違って俺の表情筋は繊細なんだ。あまり働かせられない」
「ぶはっ!何ですかその屁理屈~。てか、狐塚さんって何歳なんですか~?」
「26歳だ。何だ、おっさんだとでも言いたいのか」
「自分で言ってるし~」
飲み物につける果物をカットしながら、軽口をたたき合う。仏頂面で愛想はないけど、結構ノリはいいし思ったより相性いいかもしれない。
そんなこんなであっという間に開店時間になり、さっそく女性2名がご来店。常連なのか、俺がいることにビックリしながら席に着く。狐塚さんは相変わらずの仏頂面。1年やってるって言ってたけどずっとこの調子でよく潰れなかったなと不思議だ。
俺のそんな疑問はすぐに解決された。女性2名が注文したのはイタリアンでは王道のパスタ。トマトクリームソースパスタと、カルボナーラを運び終えると狐塚さんにちょいちょいと手招きされた。
「ちょっと食ってみ」
「え、いいんですか~」
「早くしろ」
「いただきま~す」
お客さんが頼んだパスタ2種類を少しずつ取っておいてくれた狐塚さんが、俺にフォークを渡してきた。見た目はどこにでもありそうなパスタだけど、口に入れた瞬間。
「わっ、おいし~!!」
「だろ?俺が作ったんだからな」
「なにこれ~!本当においしぃ。俺、本当にイタリアン作れるのかこの人とか思ってましたけど、めちゃくちゃ美味しいイタリアン作れる人でした~」
「さらっと失礼なこと言ったな」
「ちなみによくそんな仏頂面で1年も持ったなと思ってましたけど、この美味しさでは潰れないですねぇ」
「さらっと失礼発言2回目だぞこら」
狐塚さんが作ったパスタは一体なんの隠し味が入っているのかと料理に興味のない俺でも疑問に思うほど、美味しかった。やっぱり人は見かけによりませんでしたすみません。
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