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16時を回り、店内の片づけもすべて終えた。最初に渡されたエプロンを外してほっと息をつく。もう帰ってもいいんだろうかと狐塚さんのほうを向くと、目が合った。
「凪、このあと急ぎの用事でもあんのか」
「別にないですけど~まだ何か仕事あるんですかぁ?」
「違う。昼も大して食ってなかったからな。適当に何か作るから一緒に食ってけ」
「えぇ!やった~ありがとうございま~す」
「素直なやつ」
あ、今ちょっと笑った。鼻でフッと笑っただけだけど、確かに笑った。何だ、やっぱり仏頂面の俺様暴君様も笑えるんじゃないか。表情筋もたまには仕事させないとね。
料理が出来るまで適当に座っとけと言われたので、お言葉に甘えて椅子の背もたれにぐでーんと背中を預ける。久々に動き回ったからちょっと疲れた。そのまま目を瞑れば眠りに入りそうになるが、絶対に人前で寝てはいけない。違う、狐塚さんの前で寝たら何かやばそう。
「おし、出来たぞ」
「ん~いい匂い~!チーズリゾットですねぇ」
「お前いかにもチーズ好きそうな顔してるからな」
「それどんな顔ですか~確かに好きですけど。いただきま~す」
早速スプーンを手に一口食べる。じんわりと広がるチーズの甘さとは別に爽やかな柑橘系の風味もあって重たくない。これまた絶品だ。
「めっちゃおいし~!狐塚さんって本当にイタリアンのシェフなんですねぇ」
「お前の特技はさらっと失礼発言をすることだろ。絶対そうだろ」
「えぇ~特技ってほどでもないで~す」
「むかつくガキだな。俺より10歳近く年下のくせに要領はいいし、手先も器用。顔も男女ともに受けそうな顔だし」
「おぉ、俺とっても褒められてる~」
「褒めてない。嫌味も通用しねーのか」
こんな美味しいチーズリゾットを食べてたら嫌味も誉め言葉に聞こえる。そんな俺を見てまたちょっと小さく笑った狐塚さんも、自分の作ったリゾットを自画自賛しながら俺より早く食べ終えてた。
バイト初日はなんやかんや、いい感じで終了。どうやらこのカフェの2階に狐塚さんは1人暮らししているそうで、泊まっていくかと誘われたけど今日のところは断った。今日じゃなくても断るけどね。あぁ、帰って寝よう。
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