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魔法使いの馬車が現れたような早さで新たな週末がやってきた。花びらの大半が散り落ちて、残骸のようになってしまった桜並木の先にあるバイト先のドアを押す。最初に出迎えてくれる、カランコロンという音がもう懐かしく感じた。
「おはようございま~す」
「はよ。今日もよろしくな」
先週出会ったばかりなのに、そんな感じがしない。相も変わらず仏頂面の狐塚さんに、俺の得意なヘラっとした笑みを向けてさっそく仕事にとりかかった。
「そうだ凪、先週言おうと思ってたの忘れてたけど土曜日はうちに泊まってけ。そんですぐ日曜も出られんだろ」
「えぇ~俺、人様のお家に泊まるとかしたことないんですけど~」
「さすがお坊ちゃまだな。嫌なら無理にとは言わねーが、こっちも交通費出すよりその方が安上がりなんだよ。お前の高校の寮、こっから結構遠いだろ」
「狐塚さんケチ~!交通費くらい出してくださいよ~」
「俺の言うことには?」
「…逆らってはいけない~」
「んじゃ決まりだな。今日はどうする?」
「着替えとか何も持ってないんで来週からお願いしま~す」
今日も元気に俺様発言ありがとうございます。全然嬉しくない。わざわざ高校から遠いと思われるバイト先にしたのが裏目に出てしまったか。でも1日くらいなら寝泊まりしても大丈夫なはず。これが日曜日だったらヤバイけど。
「本当は今日も泊まらせようとお前の携帯に連絡したんだけど繋がらなかった」
「あぁ~うちの高校の寮、山奥なので電波悪いんですよねぇ」
「不便だな。後でLINE教えろ」
「俺LINEやってないで~す」
「嘘だろ?」
「嘘じゃないで~す。いまだにガラケーだしメールとか苦手なんですよ~」
「あっそ」
あれ、なんかちょっと不機嫌になられた狐塚さん。俺をお坊ちゃまだと勘違いしているからガラケーは嘘だと思ってるんだろうか。半分嘘で半分本当だけどね。
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