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変な危機感を覚えた俺は、食器を洗い終えるとまだ引き留めようとしてきた狐塚さんを振り切って家に帰った。少しでも脳裏をよぎってしまった考えに柄にでもなく自己嫌悪しそうになる。
2階建ての一軒家は一人暮らしにしては広すぎる。ただしその中でも俺は入れない部屋が2つあった。そして俺の部屋にももちろん誰も入れない。自室のベッドに身を沈める。ここで眠れるのは土曜日の夜だけど、それもこれから無くなるらしい。別に愛着も何もないからどうでもいいけど。
いつも土曜日の夜にやっていた日課は日曜日の夜にまとめればいいか。リビングの食器棚の一番左奥に入っているノートの存在を思い出して、ため息をついた。
こうして、この広い家の中に一人だと思うと、いつものことながら自分の存在意義が分からなくなるときがある。俺の居場所は、俺の存在する時間は少しずつ少しずつ削られていて、あとどれくらい存在出来るのだろうかと考えては、いつかくるその時が恐ろしい。
土曜日の朝、リビングのソファで目覚めていつもほっとする自分。まだ自分は存在しててもいいのだと、そう言われているようで。
いつかくるその時にびくびくと震えながら過ごす週末に嫌気がさして、始めてみたバイトは正解だったかもしれない。あんな嘘だらけの履歴書を信じてすぐに採用してくれた狐塚さんには申し訳ないけれど、居場所や存在意義を見出すことが出来るなら、どこでもよかった。
まだ、来てほしくない。もう少しだと分かっていても、嫌なものは嫌だ。その時が来てしまったら、この想いもこれまでの想いも全部消えてしまう。自分の存在より、そっちの方が嫌だった。
ふと狐塚さんの顔が頭に浮かぶ。あの人に、似てないはずなのに似てるところを探してしまう俺はそろそろ限界なのかもしれない。そろそろ、誰かに触れて気持ちを誤魔化さなければ、自分を保てなくなるのかもしれない。
自分の生まれてきた意味を、存在意義を、見失ってはいけない。
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