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特に何もなかったはずだけどな、と思いながらも表情には出さずに俺の営業スマイルくんには残業してもらうことにする。
「俺に何かご用ですか~?」
「うん、凪くんの連絡先を教えてほしいなと思って」
「えっ?」
「いや、その…この前、俺が読んでいた小説を面白いですよねって言ってくれたでしょ?なかなか俺が好きな小説を分かってくれる人がいなくて。もしかしたら、凪くんと本の趣味が合うのかなと思ったんだ。お店ではいつも忙しそうだしゆっくり話が出来ないから、今度お茶でもしながらどうかなと思ってさ。連絡先、知ってたら予定合わせられるでしょ?」
お~すごい、ノンブレスで一気に話されたけど、すみません、俺全然覚えてない。何、過去の俺はそんな適当なこと言ってたの?あ、結構言ってるわ。お客さんと話してた方が狐塚さんと目を合わすこともしなくていいから、少しでも手が空いたら誰かに話しかけてるわ。
「どうかな、凪くん」
どうやって断ろう。スマホじゃないのでLINE出来ないんですっていう狐塚さんにも使った手だと、この真面目そうなサラリーマンはメールか電話番号だけでもとか言ってきそう。携帯を持ってないんです、なんて嘘は通用しないだろうし。
あぁ、恨むぞ過去の自分。もう適当なことをお客さんに言うのはやめよう。やめようと決意したところで今の現状が変わるわけでもない。
「ん~…俺、実は神村学園に通ってるんですよ~」
「そうなの!?あの全寮制の私立高校?」
「そうで~す。なので、毎日夜遅くまで勉強しないといけないし、バイトが終わったら塾もあるので、友達と遊ぶ暇もないんですよ~。なので上里さんとゆっくりお話しする時間もないし、連絡先交換したところであまりお返事とか返せないかな~なんて」
「あ、そう…なんだ」
「すみません。お気持ちだけ受け取っておきますねぇ」
これで諦めてくれるだろう。事実、たったこれくらいのことで世界の苦悩をたった一人で背負っているみたいな顔つきで明らかに落ち込む上里さん。これ以上俺にどうしろって言うんだ。
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