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注文伝票が、悪夢のように捌いても捌いてもあとからあとから増える。自分の手足に不足を感じるほど忙しい土曜日は初めてかもしれない。ずっと雨が続いていたから、天気が良くなった週末に殺到するとは、みんな考えることは一緒らしい。
もう一人土日だけバイトを雇ってもいいんじゃないかな、と一瞬思ったけれど俺と狐塚さんの間に誰かが入るのは少し面白くない。もう、あまり時間がない俺には今のこの時間を狐塚さんと2人きりで過ごしたいと思ってしまう。
狐塚さんもそう思ってくれているから、新しいバイトを取らないんだろうか。そうだったら嬉しいな。なんて考えていた俺の気持ちはその日の夜、ひっくり返される。
「これから夏休みだし、俺とお前だけじゃ絶対に回せないからもう1人、バイト雇うか」
「え…」
ご飯も食べてお風呂も上がった後、いつものようにのんびりとソファに座ってテレビを眺めながら他愛もない話をしていたところに、突如落とされた言葉。軽くショックだった。
だけど考えてもみたら、バイトの時間だけ1人増えるだけで今のこの2人きりの時間は無くならない。どうせ2人で忙しくバタバタしてたら会話なんてする暇もないんだから、今のこの時間が邪魔されなければいいのかもしれない。
「そうですね~俺も賛成です~」
「土日と、夏休み中だけ平日にも入れるやつ2人ほしいな」
え、1人じゃないの!?しかも、俺がいない平日に新しいバイト君と2人きりでやるって。狐塚さんの忙しさを思ったらここは恋人として、心から賛成すべきとこなんだろうか。でも面白くない。
「2人もバイト雇ったら、お給料出すの大変じゃないんですか~?」
「あぁ?うちがそんなに稼いでねーように見えんのかよお前は。大繁盛御礼、もう1店舗出せるくらいだぜ。出さねーけど」
「ふ~ん」
「なんだよ、凪。新しいバイトが増えるの嫌なわけ?」
「全然嫌じゃないですよ~。ただ、ホールの仕事教えるのは俺ですよねぇ?それが上手く出来るかなって少し不安になったくらいで~す」
ニヤニヤと意地の悪い笑顔で顔を覗き込まれて、咄嗟に嘘が出る。それを狐塚さんも分かっているのか、俺の頭に手を伸ばしてくしゃりと撫でた。
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