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今日も昨日と同じように走って公園に向かう。全く同じ道を通っているはずなのに、昨日とは全然違った風景に見えるんだから不思議だ。
小さな街灯が見えてきて公園にたどり着くと、昨日と同じブランコに剛平さんの姿はすでにあった。一気に気分が高揚していくのが自分でも分かる。
「剛平さん!」
名前を呼んで小走りで僕もブランコに近付いた。僕に気付いた剛平さんと視線が交じ合う。黒縁眼鏡の奥にある黒い瞳に、僕が映された。
「待たせてしまってすみませんっ…いつからいたんですか?」
「さっき来たところだから、気にするな」
「よかったぁ。何時にとか約束してなかったから、昨日と同じ時間くらいかなと思ってたので」
「あぁ、俺も同じだ」
剛平さんの表情は変わらない。たぶん感情があまり表情には出ない人なんだろうな。だけど怖くないのは何でだろう。そう疑問に思いながら、僕も昨日と同じブランコに座った。
「剛平さんって医学部なんですよね?今って大学も夏休みですか?」
「…あぁ。だが、勉強は毎日してる」
「やっぱりそうなんだ~!僕はバイトばかりです。今日も17時までバイトで、それからはやっと夏休みの課題に手を付けました」
「バイトもしてるのか。偉いな」
「剛平さんはバイトはしてないんですか?」
「してない」
バイトもする暇がないくらい医大生って勉強大変なんだなぁ。僕はお金も欲しいし、遊びにも行きたいから絶対にバイトは辞められない。息抜きにもなるしね。
剛平さんは僕からの質問に短く答えるだけで、特に話を振ったり笑ったりしているわけではない。けれど剛平さんの醸し出す雰囲気は落ち着いていて、僕まで穏やかな気持ちになる。
「あ、そうだ!剛平さんは星座とか詳しいですか?」
「…まぁ、好きだから」
「じゃぁあの星は何ていうんですか?僕も星に詳しくなりたいなって」
「どの星だ?」
僕が指さした星を見上げて探そうとしているが、無数にある星の中から見つけ出せないらしい。剛平さんと僕が座っているブランコも人1人分くらいの間があるから仕方ない。
なんて説明したらいいのかなと考えていると、剛平さんがブランコを降りて僕の背後に立った。そして僕の横に剛平さんの顔があって、僕と同じ視線で見ようとしてくれてるのが分かった。
けれど僕はあまりの距離の近さに不自然に心臓が跳ねる。剛平さんからはふわりと優しい匂いがして、星をさしている指が少し震えた。
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