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夕方の日差しは、その暑さにも日中の挑みかかるような強さはなく、どこかだらりとけだるい残照になっている。白昼の激しい陽射しの名残りを滲ませながら、普段は穏やかな桜並木には浴衣姿の男女や家族連れの草履に踏ませながら賑わい始めていた。
今日はイアリアンカフェに行く途中の通りでお祭りがあるらしい。その影響もあってか、カフェの来客数も元々の忙しさを上回る勢いだった。
「お祭りか~。花火も上がるんですか~?」
「あぁ、9時頃に上がるぞ。何だ、見たいのか」
「う~ん…見たいっちゃ見たいですけど~」
「祭りは好きそうじゃないよな、お前」
「嫌いではないですけど、好きでもないですねぇ。狐塚さんは~?」
「嫌い」
「あははっ!即答~!」
カフェの片づけをしながら、窓の外を眺めつつ会話をする。宣言通り、狐塚さんは新しいバイト君を2人雇い、土日に入ってくれるもう1人の子はさっき上がったばかりだ。
すべての片づけを終えて最後の仕事、日めくりカレンダーを明日の日付にするため、13から14にした。もう8月も半ばなんだなと時間の流れの早さに焦燥感が生まれる。
「明後日、実家に帰るのか」
「そうですよ~」
「んじゃ、明日バイト終わったら弁当でも作るから、ご両親に渡せ」
「ええぇ?わざわざいいですよ~」
「本当は昨日から帰る予定だったのを、土日挟んでるからって月曜からにしてくれたんだろ?その詫びだ」
「律儀ですね~」
そんな会話をしながら2階へと向かう。もう見慣れた狐塚さんの家に足を踏み入れ、決められたことのように狐塚さんはキッチンへ、俺はソファに向かう。テレビをつければ、お盆休みの渋滞情報などがやっていた。それを流し目にキッチンに立つ狐塚さんを盗み見た。
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