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崖から転がり落ちるみたいに過ぎていく時間。デザートに注文したパフェもしっかり平らげ、手を合わせてご馳走様をした。
剛平さんと向き合って食べたハンバーグは、今まで食べてきたハンバーグで1番美味しく感じた。それは恋が見せる魔法だったのかもしれない。
プラネタリウムを一緒に見て、ご飯を食べるところまでは最初から2人で決めていたけれどその後のことを考えていなかったことに今更気付く。
もう、お別れの時間なのかな。もっと一緒にいたいという思いがむくむくと顔を出す。
「ふぅ~お腹いっぱいです!…あの、剛平さん」
「あぁ」
「この後、まだ時間はありますか?」
「…行きたいところでもあるのか」
「そういうわけじゃなくてっ…もし、まだ時間が大丈夫ならいつもの公園でいつものようにお話したいなと思って」
「買い物とかじゃなくていいのか?公園で話すのはいつでも出来るが、デートは今日だけだぞ」
“今日だけ”か……剛平さんは何気なく言ったんだろうけど、僕にとってはずしりと重い言葉だ。縮まったと思った距離が、一方通行の間違いだったんじゃないかと思えてくる。
「デート…もう、してくれないですか?」
「………」
「僕、本当に剛平さんが好きなんです」
「…ここでする話じゃないな。いつもの公園に場所を変えよう」
さらりとスマートに交わされてちょっと落ち込む。当たり前のように伝票を持ってレジにすたすたと歩いていく剛平さんの後を慌てて追いかけた。
「あっ剛平さん!僕が払いますよ!僕がご褒美くださいって言って無理に誘ったんですから」
「…無理じゃない。それに、俺は一応満輝より年上だ。ここは年上をたてるところだぞ」
「え、えと…」
「いつものように素直に笑ってたらいい。満輝の笑顔が俺へのお返しになる」
「……ありがとうございます!ごちそうさまです!」
つい数十秒前には落ち込んでいたのに、僕の機嫌はもうなおっている。剛平さんは僕を落として上げるのが相当上手いらしい。
剛平さんがご飯代を支払ってくれて、僕たちは店を出た。すっかり街灯やネオンが灯って、街は夜の顔になっていた。
満腹なお腹と共に来た道を戻る様に歩く。行きの時より、2人の間の会話はぐんと減った。僕がこれから話すであろうことに緊張して、口が動かなくなってしまったせいだった。
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