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今まで剛平さんが僕のフルネームを知らなかったことに衝撃を受けると共に、それは僕の告白を遮ってまで今聞かなければいけないことなのだろうかと困惑する。しかし、剛平さんの表情は至って真面目だ。
「僕のフルネームが、告白の返事に何か関係するんですか?」
「……返事はもう決まっている。確認したいことがあるだけだ」
確認したいことって何だろう。ただ1つ、デート中にずっと気になっていたことはあった。僕がお兄ちゃんの話題を出すたびに、剛平さんの表情が僅かに強張っていたこと。
それは本当に些細な変化だったから、僕の見間違えかもと思っていた。もしかしたら、剛平さんはお兄ちゃんと知り合いなのかな。お兄ちゃんは剛平さんの4つ年上だから、学校の先輩後輩にはなれないし、接点が分からない。
「そういえば、僕も剛平さんのフルネーム、知らないです…」
「俺のことはどうでもいい。満輝のことを聞いている」
「どうでもいいって何ですかそれ!」
「碓氷だ。碓氷剛平」
「あ、はい…ありがとうございます」
プリンを型から抜くようにストンとあっけなく教えられて、逆に僕がたじろぐ。碓氷剛平さん…と心の中で何度も復唱してしまう。だって、好きな人の名前だもん。
「今更、自己紹介とはな」
「ふふっ…本当にですね」
「次は満輝の番だぞ」
そう促されて、僕は口を開く。確かめたいことって何だろうとか、どうしてそこまで僕のフルネームに拘るんだろうとか、いろいろ疑問に思うことはあったけれどフルネームくらい教えない方がおかしい。口を開こうとしたとき、剛平さんが言葉を付け足した。
「満輝のフルネームと……満輝の兄のフルネームを、教えてほしい」
あぁ、やっぱり剛平さんはお兄ちゃんについて知りたいことがあるんだ。僕の知らない何かが剛平さんとお兄ちゃんの間にあるんだと思うともやもやするけど、僕は真摯な瞳に誘導されるがまま、答えた。
「僕は、狐塚満輝です。兄の名前は……狐塚遼哉」
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