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一人暮らしをする遼哉の店舗兼住宅から、実家はそう遠くない。電車を2駅分、車を走らせれば久しぶりに見る育った家があった。
玄関で兄弟2人の母親が嬉しそうに遼哉を歓迎し、花の金曜日だということで仕事の飲み会だという父を抜いて3人で食卓を囲んだ。懐かしい母親の味は、やはり自分がどれほど腕を磨いても敵わないなと、遼哉は舌を巻く。
連絡を寄越してきた弟の様子をさりげなく見ていると、母親に心配をかけないとしているのか一見変わったことはないように見えるが、明らかに箸の進みは遅かった。目の下に薄っすらと隈もある気がする。
「ごちそうさまでした」
食事を終えて片づけを手伝おうとしたが、満輝が遼哉の腕を引っ張って満輝の部屋へと連れていく。母親もそれを仲がいいわねと笑って見送った。
パタン、と満輝の部屋の扉が閉まり、乾いた沈黙が落ちる。いつも明るくて小動物のような弟の背中には、今は暗い影を背負っていた。
「満輝?一体何があったんだ」
「…あ、えと…突然ごめんね。とりあえず座ってよ」
「おう」
話を振れば、目を泳がせておどおどする満輝を遼哉は今まであまり見たことがない。悩みなんてなさそうだよね代表系男子の弟に、相当深刻な悩みが出来たのだと遼哉は少し身構えた。
「お前がこんなふうになるなんて珍しいな」
「えっそうかな?」
「そうだぞ。この前の試験はいい結果だったんだろ?母さんが頑張ってたって褒めてたぞ」
「……うん、そうなんだ」
少し話すために猶予も与えてやらなければと思い、遼哉は当たり障りのない話題で話しやすい空気を作るつもりだったが、満輝は分かりやすいほどさらに落ち込んだ。
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