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この扉を開けて、鈴音がいなかったらどうしよう。
玄関の前で逡巡する。
しかし、僕が他人と連絡をとるにはリビングにある固定電話を使うしかない。
覚悟を決めるように深呼吸をして、ドアノブをひねる。
扉を開け、真っ先に靴棚を確認する。
そこに昨日鈴音が履いていた靴があることがわかり、ほっとする。
「ただいま」
靴を脱ぎつつ、明かりの点いているリビングに向かって声をかける。
リビングに行くと鈴音はソファーに座ってスマホを操作していた。
「おかえり」
こちらを見上げながら鈴音が言う。
鈴音の姿を確認して、声を聴いたら、今まで堪えていたものが唐突に溢れた。
「なんで昨日帰ってこなかったの、帰るって言ったのに。
連絡もしてこない、家に帰ってこない、学校にも来ない。
何処に居たの、あの女と一緒だった?」
彼女作るなんて、僕と一緒にいるのいやになったの?
僕のこと嫌いになった?
ずっと一緒だって言ってくれたのに嘘だったの?」
一方的にまくしたてる。
鈴音はただただ困惑した表情を浮かべてこちらを見ていた。
「ちょっと落ち着いて、琉雅。一気に言われても、俺は聖徳太子にはなれないって。
連絡入れなかったのは悪い。ただ栞が_」
「もういいよ」
その顔を見てあきらめた。
僕は不安だったのに、必至なのに、それを分かってくれなかったことに酷く傷ついた。
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