アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
距離
-
「また、いない…」
樹の下に足を運んでも待ち望んだ姿はない
木漏れ日の下にいても、体は温まらない
どういう訳か善さんに会う回数は急激に減り、大学ではほとんど会わなくなってバイト先で会うくらいだった
避けられているのかもと思ったが、バイト先で会う時は普通に話をしてくれるし避けられている感じはしない
仕方ない、と校舎の方へ歩いて行くと途中で潤に会った
「あれ、爽太じゃん。こんな所で何してんの?」
「善さんがここにいること多いんだけど、最近見てなくってさ」
そう言うと潤は、え?と驚いたように目を少し見開いて、校舎の二階を指差した
「俺今さっきあそこら辺で見たけど」
「え…そう、なんだ」
なんだかホッとしたような、残念なような
善さんもいつもあの樹の下にいる訳では無いだろうし、分かっているはずなのに前まではいつ行っても会えていたからそれが当たり前になっていた
「今行けば会えるんじゃない?」
深く聞かずに、穏やかに笑う潤は本当に優しい奴だと改めて感じる
きっと俺の善さんに対する想いになんとなく気が付いているはずなのに問い詰められることはない
潤とは、中学からの付き合いだけど一度も喧嘩をした事がなかった
それは、お互いに干渉し過ぎないのもそうかもしれないが何より潤の人柄の良さに救われてきた
理不尽なことで怒ったりしないし、まず怒るよりも理由を聞いたり相手の事を知ろうとする
実はそんな部分に尊敬しているし、憧れてもいる。
そんな潤にだからこそ、いつまでも隠し続けるのは絶対に嫌だし打ち明けたいとも思っていた
「…いきなりなんだけどさ…俺、善さんのこと好きだ。この前潤に聞かれた時から多分そうだった」
なんて言われるか心臓が嫌な音を立てながら返事を待つ
潤が良い奴だって事は分かっているし、この事を否定するとも思っていない
けど、“同”から外れた“異”を打ち明けるのはとても怖い
それがどんなに信頼している人でも周りとの違いを見つけてしまうたび、臆病になる
「ぷ…っ、フツーこんな場所でいきなりそんな事言うかよ…っ、
しかも顔青すぎだし。何にそんなビビってんの」
予想だにしない潤の反応にぽかん、と言う反応が正しいだろう
驚いて言葉を発することも瞬きさえも出来なかった
「……はー、緊張した…っ」
言葉を理解した途端、嫌な音を立てていた心臓の音は収まり気が抜けたようにしゃがみ込んだ
「俺は、爽太がいつ話してくれんのかなーってずっと待ってた。ありがとうな、話してくれて」
いつになく真面目な声色に顔を上げると優しく笑っていて、やっぱり打ち明けて良かったと思う
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 138