アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
. 善side
-
「…さん、善さん」
低くて心地の良い声に重い瞼をこじ開ける
そこにはかっこいい顔を情けないほど心配そうに歪めて俺を覗き込む爽太君がいた
「大丈夫ですか?お粥出来ましたけど、食べれそうですか?」
「…ありがとう。食べたい」
そう言うと当たり前のようにスプーンを手にとって、俺の口元へ持っていく
この子は本当に優しい子だ
つい先日、傷付けてしまった事をずっと悔やんでいた
大事なものは作りたくない、不確かなものなら要らないと言ったのは本心だ
けれど、その時の爽太君の苦虫を潰したように歪んだ顔が頭から離れず、あんな事を言わなきゃ良かったとあれから毎日思っていた
そんな俺を救ってくれたのは沢山傷付けてしまったはずの爽太君だった。
「……美味しい。」
「ははっ、子供ですか。口の横ついてます」
気にしてないと言うように穏やかに笑っては暖かさをくれる
「…このくらいにしておきましょうか。
残りは保存しておくんで、ちゃんと食べてくださねいね!」
「あはは。爽太君が作ってくれたんだから、ちゃんと食べるよ」
ほんの少し食べただけで限界がきてしまった事、君はどうして分かったの?
何も言っていないのに、そしていつも冷静だと言われることが多い俺の事を当たり前のように何故理解できるのか
料理屋さんに行っても、味気ないと思っていたご飯も爽太君が作ってくれた簡単なおかゆは
美味しくて、美味しくて昔の心の傷にじんわりと染み込んだ気がした
「…家の場所って千紘から聞いたの?」
「あ、はい。…すみません、迷惑でした?」
優しくて、かっこ良くて、強くて
そんな人がどうして俺の言葉一つで不安になるのだろうか
「ううん、嬉しかった」
そして、こんな俺の一言で頬を赤らめる君のことが愛しくて仕方がない
起き上がっていたせいなのか頭はだんだん、ぼーっとし始めて物事がうまく考えられなくなっていく
「ねぇ…期待して良いって、言ったの覚えてる?」
そう言うと爽太君は苦笑いを溢す
きっと優しいから頷いたら俺が気にすると思って何も言えないのだろう
けど、無かったことにはしたくないという感情もあるのだろう
優しさ故の葛藤が見て取れた
「俺は、ちゃんと…覚えてる」
「あの…善さん?」
ねぇ、爽太君
今日初めて千紘以外を家に上げたんだよ
それと、こんな適当で冷たい人間にここまで寄り添ってくれたのも君が初めてだ
「俺は……」
君の真っ直ぐな心が、冷たく凍った心を包み込んでくれて
弱さも、汚いところも、全部君になら見せても良いと思えたんだ。
それともう一つもう、後戻りは出来ない答えが。
「俺は爽太君が好き。
君が居ないと、生きていけない」
「善さん…」
目の前で涙を零した君の側に俺は居たい
いつか前に感じた胸の痛みを思い出す
自分だけ幸せになっていいのか、過去の自分がそう言って俺を責める
でも
「嬉しいです」
「…っわ」
この温もりから、もう離れたくない
そう思ってしまったんだ
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 138