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「……何やってんだ、俺」
待ち合わせ場所を聞くのを忘れてしまった
電話番号は渡したし、貰ったけれど電話していいものか…
いや、良いんだろうけどなんとなく気が引けるというか何というか
そんなどうでも良い葛藤をしていると携帯の着信音が響いた
「…はい、もしもし」
「あ、爽太君?一色善です」
電話から聞こえた声は耳の近くで喋っているみたいで、くすぐったい
「はいっ、柳楽爽太です」
「あはは、うん、爽太君今どこ?
俺が行くから場所教えてもらえる?」
そして電話越しの善さんの声はいつもより、低く聞こえてなんだか緊張してしまう
「えっと、さっき会った教室から直ぐの踊り場にいます」
「ん、分かった。直ぐ行くね」
ガサゴソと音がするから、きっと鞄を整理しているのだろう
意外と善さんは大雑把でそして整理整頓が苦手なようだった
そんなことも仲良くなってから知れたことで、最初はそんなイメージ一つもなかった
「うわ、ここの廊下の電気消えてるんだけど」
とてつもなく嫌そうな声色で、そう言う善さんは初めてだった
「善さんくらいの苦手なんですか?」
「うん、だから俺が行くまでずっと喋ってて」
完璧な善さんの意外な弱点を知ってしまった
声色は何かに縋るように不安そうに揺れていて、思わず笑いそうになる
けれど善さんはいたって真面目なようで俺が笑っているのを聞いて不思議そうにしていた
「あ、爽太君!」
嬉しそうな、少し張った声が聞こえて振り返れば携帯電話を片手に持った善さんが立っていた
「良かった〜、やった会えた」
気が抜けたように携帯を耳の側から降ろして、バックの中に入れた
「そんなに暗かったんですか?」
「少しね」
肩を並べて帰りの方向へ足を進めながらそう聞くと、困ったように笑った
その様子にまた笑うと少しだけ不服そうに頬を膨らませた
「ふはっ、すみません。可愛くて。
…それで今日はどこに行きます?」
「うーん…何処にしよっかぁ。あれ?こんなとこにレンタルビデオ屋さんがあったんだ…」
視線を俺もその先に向けると、言う通りにレンタルビデオ屋がこじんまりと建っていた
どうやら最近出来たのと、いつもは違う道を歩いていたから今まで気が付かなかったみたいだ
「あ、じゃあここでビデオ借りて俺の家で観ます?」
「でもいきなりお邪魔しちゃって大丈夫?
家の人とか、急に他人が来ると困らない?」
相変わらず気を使う人だ、と感じる
潤に同じ様に言ってもこんな事を言われることはなくって、やったー!と子供の様に喜んでいる姿しか見たことがない
「俺、一人暮らしなんで大丈夫ですよ」
「あれ、そうなの?じゃあ…お邪魔しちゃおうかな」
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