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不穏
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「海の家ってこんな感じなんだね」
善さんがそう呟いたので始めてきましたか?と尋ねるとゆっくり頷いた
メニューを見ると定番の焼きそば、ラーメン、かき氷などはもちろんたこ焼きやうどんと品揃え豊富だった
「翔は何にすんの?」
「醤油ラーメンにしよっかなー」
海水で少し冷えた体は温かいものを欲する
かき氷なんかは子供のうちは良く食べたけれど、歳を重ねると暖を求めて仕方がない
「じゃー俺も。善さんは?」
「枝豆にしようかな」
枝豆?…それはご飯なのか?
千紘さんもそう思ったらしく直ぐに駄目、と却下する
「それは副菜でしょ。主食を食べなさい」
「えー?んー、じゃあ何にしようかな」
善さんは困ったように笑ってから再度、メニューに目を向ける
以前家に行った時も冷蔵庫に何もなかったし、普段何を食べて生活をしているのだろうか
「善さん、俺めちゃめちゃ食べるんで余ったら貰いますから好きなの選んでください。
食べられそうなものじゃなくていいから」
そう言うとあからさまに申し訳なさそうな顔をされて、こちらも苦笑いを向ける
こんな時に雰囲気をある意味で壊してくれるのが、翔だ
「えー!ずるっ、俺にもくださいよ。
何で爽太だけもらう予約してんの」
「ぷっ、餓鬼なの?」
それにすかさず突っ込みを入れるのが千紘さん
この四人でいると誰一人悲しい思いも、疲れる思いもせずに皆んなが皆んなを思い合ってこんなにいい関係を築けるなんて稀だと思う
「じゃあ…おでん、が食べたい」
「ふは…っ、その顔子供ですか」
恐る恐る、まるで親の顔色を伺う子供のように見えた
それがあんまりにも可愛らしくつい、笑ってしまうと善さんは訳が分からないと首を傾げた
「じゃあ、買いに行きましょうか」
「うん」
そう言って歩き出すと後ろで何やら話されているのが聞こえた
「いや、あれ男だろ。…ほら、ズボン履いてるし胸もねーじゃん」
「……あー、マジだ。でもあのレベルだったら俺普通に抱けるんだけど。顔はそこら辺の女より余裕で綺麗だし」
ゲラゲラと品のない笑い方をして善さんを品定めするように見る二人組の男が直ぐ後ろにいた
善さんも流石に気が付いてしまったようで、俺が寄せた眉間のシワに細い指が置かれる
「あはは、眉間にシワ寄ってる。俺は全然気にしてないから爽太君も気に留めないで?」
本当に善さんは気を回しすぎる。
もともとゲイではない人が、それも悪意を持って抱かれるだのなんだの言われることは当然気持ちが良いものではないのに
「気に留めるに決まってるでしょ。大事な人があんな風に言われてたら苛つきます」
そう言うと、頬がポッと染まった善さんに可愛いと思うけど俺は真剣に言っているんだからちゃんと聞いて欲しいと思う
「どこで照れてるんですか」
「だって、大事な人がとか言うから…もー、いいよ。」
そう言ってスタスタと歩いてしまう善さんの隣に素早く並んで、顔を覗き込む
するともちろん目が合う訳で、善さんはふわりと俺に向かって微笑んだ
「……っ」
「仕返し」
向こうで千紘さんが俺たちを呼ぶ声がして、善さんに手を引かれてそちらへ足を進める
本当に、一枚上手だ
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