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「…俺のこと、怖いですか?」
恐る恐る近寄るともう入らない力で、体を引きずりながら逃げようとする
その姿がとても、痛々しくて胸を痛めた
「…っ、触らないで」
怯えるように拒絶されたのは初めてで、それでも構わずに近寄った
千紘さんと翔は、少し離れたところから心配そうに見守るように立っている
「やだ……っ、来ないで」
「善さん…」
逃げようとする善さんをぎゅ、と抱き締める
以前は腕の中にすっぽりと収まって全てを委ねていてくれていたのに
今は必死に逃れようと身をよじってバタバタと暴れる
その体は目でもはっきり分かるくらい震えていて胸が切り刻まれるような気分だった
「いや…っ、離して…お願い…っ…きたないし……触らないで…」
その言葉を聞いて、俺が流すはずじゃない涙が溢れそうになる
「汚いのは善さんじゃないよ。…あいつらだ。
……っ、遅くなってごめん……ごめん、善さん」
もう少し早ければ
あの時強引にでも付いていけば
後悔が次から次へと襲ってくる
情けないほど、声も抱き締める腕も震えて
涙も堪えきれずに溢れてしまう
「爽太…くん、…泣かないで」
震えたままの、細い手が頬に当てられる
その手を握ると善さんからも涙が溢れた
辛い、その言葉が涙を通して伝わるようで
痛い
「善さん…もう、大丈夫ですから……っ、…」
細い体をもう一度、確かめるように抱き込めば今度は逃げるようにもがくことは無かった
細く、冷え切った腕が背中に縋るように回されて肩口に顔を埋められる
「……そう、た……っ、好き……、大好き」
聞いたことのないような苦い声
しゃくり上げるように体は震え
『好き』その言葉がこんなにも辛く聞こえる日が来るなんて思っていなかった
「……うん、俺も、大好き」
なんで善さんが
どうして、こんなにも優しくて愛される人が
誰かが身代わりになればいい
そんな事を一瞬でも考えた俺の方がよっぽど
汚くて、酷い奴だ
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