アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
.
-
「ごめん、もう大丈夫」
しくしくとまだ鼻をすすりながら離れていくその姿に、とても甘やかしたくなる
「何でごめんなんですかー。
俺は善さんが素直に頼ってくれて嬉しいですよ」
「あはは、ありがとう」
柔らかく笑われて、先ほどまでの妙に張り詰めた様な緊張感は薄れていった
善さんも俺に対しての恐怖心がだんだんと消えてきた様に思えてホッと息を吐く
「わぁ……すっごく良い匂い。美味しそう」
子供の様に目を輝かせて言う善さんに思わず笑ってしまう
こんなんで喜んでくれるのなら、毎日でも作ってあげたくなる
「いただきます。」
「はい、いただきます」
二人で手を合わせて料理に手をつける
部屋には少しの笑い声と、素麺をすする音、テレビの音が合わさっていて素朴な雰囲気が漂う
「爽太君って器用だよね。
料理も、運動も、勉強もさらっとこなすし」
それを言うなら善さんの方だ。
俺は今まで善さん以上に完璧だと言える人を見たことがない
「いや、俺歌がめちゃくちゃ音痴なんですよ」
「え?そうなの?それは聴いてみたいな」
興味有り気に善さんはそう言った
何を想像したのかは分からないが、クスクスと笑い始める
「なんなら今歌いましょうか?」
「うん、聴かせて」
***
「あははっ、…本当に下手くそなんだ…っはは」
見事にど下手くそな歌を披露した後、善さんは声を出して笑い始めた
こんな事で笑顔になってくれる善さんが愛おしくて堪らない
「もー、…じゃあ今度は善さんの聴きたいです」
「俺はまた今度ね」
そう言ってまた麺をすすり始めてしまう。
けれどそのスピードは明らかに落ちて、もう食欲が満たされたことが分かった
それでも食べ進めようとする善さんの食べかけの麺が入った器ごと俺の方へ引き寄せる
「やった。もらっちゃいますよ」
そのまま、善さんが手に持った箸を抜き取って麺を口に運ぶ
「ごめん、残しちゃって。すっごく美味しかったよ。作ってくれてありがとう」
「喜んでもらえたんなら良かったです」
元気に見えてもやはり精神的に来ているのか、いつも食が細いのに今日はいつもに増して喉を通らないようだ
半袖の服から覗く白く細い手を見てもう少し食べて欲しいと思うが、致し方ない。
「ふー、美味しかった」
ささっと食べてそれを洗おうと立ち上がると、善さんに待って、と制止の声をかけられる
「洗い物くらいやらせて?爽太君はお風呂にでも入ってゆっくり休んで」
ゆっくり休んだ方がいいのは善さんの方なのに
そう思うけれどこうすることで善さんの気が楽になるのならお願いしよう
「はい、ありがとうございます」
「ん。行ってらっしゃい」
穏やかに微笑んだ善さんに笑い返し、風呂場に行く支度を始めた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
75 / 138