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「爽太君って肩幅広いね」
朝ごはんを作っていると、後ろからそんな声が聞こえて振り返る
善さんはソファーから上半身だけを乗り出してこちらを見ていた
その姿がとても子供っぽく見えてクスッ、と笑う
「俺色々とデカイんですよね。背も、手も、足も何もかもが」
そう言うと善さんは少し頬をぷくっと膨らませて、目を鋭くさせた
そんな顔も可愛く感じてしまうなんて相当だ。
「羨ましいよー、男からしたら」
「善さんはそのままで十分綺麗ですよ」
逆にその顔で筋肉ゴリゴリな体格をしているところなんて想像がつかない
でも顔は整っているから想像は出来ないままだけれどきっと、格好つくのだろう
「…爽太君ってストレートに何でも言うよね」
「ははっ、善さんには負けますけど」
そう会話をしているうちに朝ごはんほどの簡単なものは直ぐに作り終え、テーブルに並べた
今日は昨日買っておいた電子レンジで完成する白米と、味噌汁、卵焼き、納豆だ。
少なく感じるかもしれないけれど善さんにとったらちょうどよく食べられる量だと思う
「美味しそう……」
こんな簡単な料理なのに、子供のように瞳をキラキラさせて並べられたご飯をじっと見ている
もし、一緒に住んだら毎日こんな顔をしてくれるのだろうか。そんな事をふと思ってしまった
「一応少なめによそいましたけど、多かったら全然残して大丈夫ですからね。余ったら俺がもらうんで」
「うん、ありがとう。でもきっと食べられそう」
肩をすくめて小さく笑う善さんは、やっぱり昨日に比べて少しだけ元気になった
二人でいただきます、と口を揃えて料理を口へ運んだ
善さんは大袈裟なくらい美味しいと褒めてくれて、その度に穏やかに笑った
「やっぱり爽太君が作ってくれる料理はどんなものより美味しい。…やっぱり魔法でも使ってるんでしょ」
ふざけたようにそう言うけれど、その言葉には聞き覚えがあった
“ 爽太君の手は、魔法みたいだね。
触れてるだけで怖くなくなる ”
そう昨日言われたのをふと、思い出した
「魔法が使えたら、良いんですけどね」
薄く笑ってそう善さんに返す。
本当に魔法が使えたのなら、善さんがピンチの時は直ぐに飛んでって
二度と傷つかないように何だってするのに。
「えー?魔法が使えちゃったらもう爽太君は無敵になっちゃうじゃん。少しくらい不完全で良いんだよ……例えば、音痴だって事とかね」
最後の方はもう揶揄いにしか聞こえないけれど、やっぱり善さんは善さんだ。
人のどんなところも受け入れて、無理矢理でも長所に導いてくれる
「もー、本当にちょっと思ってたんですけど」
「あはは、可愛いね」
クスクスと笑いながらそう言う善さんは、きっと食べられそう、その言葉通りに全て食べ終えていた。
いや、善さんが食べられるであろう量に少なくよそったから当たり前と言えば当たり前なんだろうけど
ただ、すごく嬉しかった。
「でも、爽太君はやっぱり魔法使いみたいだ」
そう子供のように軽やかに笑った善さんの顔は
きっと、いつまでも色あせない
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