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「え…………?」
「爽太ー!」
どきり、心臓が音を立てた。
翔が好きだと言った人が家の前でインターホンを押し、その声を響き通らせたからだ
「ふは…っ、爽太動揺しまくり。俺が言ったのは爽太にどうにかしてほしいからじゃない。
友達だから言ったんだよ、それだけ」
クスッと妙に大人びた笑顔を見せて俺の背中を強く叩いた
背中に熱がじんじん伝わって、息を深く吸う
「……分かった。あ、麦茶足すから貸して」
「さんきゅ。爽太」
いつもの少年のような笑顔を見せて、空っぽのグラスを差し出した
周りは結露で濡れていて、机には水たまりが広がっていた
***
「おー!何だこれ!いいのあんじゃん!」
「えっ、それが見たいの?」
何というデジャブ感。
はしゃぐ翔、怯える善さん
これはいつか前の俺と善さんのやりとりを見ているようだ
「やっぱ夏といえばホラーですよ!」
はしゃいで勝手にDVDをセットし始める翔に善さんはもう何も言えないらしかった。
千紘さんは小さい時からずっと一緒にいるし、善さんが苦手なのを知っているようだ
そこまでは良いんだけど……
「善、良かったじゃん。みんなで見たら克服できるかもよ?」
「千紘さんって鬼ですね」
そう?と笑いながらいう顔はもう鬼そのものだ。
翔も今のやりとりで察したように黒い笑みを浮かべてゆっくりとテレビの電源を付けた
……善さんの顔を見ながら
「ほんっと皆んな意地悪だよね」
頬を膨らませているものの、さり気なく俺の方へ近づいてくるのがたまらなく可愛い
「あ、ほら始まるよ」
「じゃー部屋暗くしようぜ!」
「えっ、いいよそんな本格的にしなくて」
がやがやとしながらも、テレビ画面から聞こえる不穏な音でみんな少しの期待、少しの不安を抱えて画面に釘付けになった
「善さんってどのくらい駄目なんですか?」
「あはは……」
笑顔はいつもの変わらない完璧なものだけど、声は情けないほど震えてしまっていてそれを聞いた千紘さんは爆笑した
「あっはは、善ほんと最高。まー、でも本当に駄目そうだったら言って良いからね」
揶揄いながらもやっぱり優しい千紘さんは手を伸ばして善さんの頭をぽん、と撫でた
「善さんでも苦手なものってあるんですね」
「…俺を何だと思ってるの翔君」
確かに、翔がそういうのも致し方ないと俺と千紘さんは顔を見合わせて笑った
そんな余裕があったのもこの辺りぐらいまでだった
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