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「あの……善さん?」
「…はい」
近づくではなくもう、くっついている距離だ。
俺の腕に少し後ろに下がった善さんがしがみついていて、肩越しに画面を見ている
流石にこの間みたいに泣くことはないようだったけれどやはり苦手なものは苦手らしい。
「………嫌、だった?」
嫌な訳ないだろ、そう言いそうになる。
そんなの好きなんだからくっつかれて嫌な気分になる方が珍しい
「そうじゃなくて、ただ、やっぱり怖いんだなーって思っただけです」
「そうだよ。全部見たらちゃんと褒めてね」
本当にこの人は、人の心をいとも簡単に操ってしまう
本人にその気がないことは重々承知だが、事実そうなのだ
「はいはい」
もう既に甘やかしてあげたい気持ちが勝りそうになる
というか二人きりだったら完全にそうだった
「おーい、そこ何やってんだー。
ちゃんと……見なさーーい!」
「わっ、もう……驚かせないでよ」
翔が急に大声を出したことで俺に引っ付いたままの善さんの体が大袈裟なくらい揺れた
千紘さんも少し驚いたようで翔を軽く小突いた
「うわぁぁぁああ……っ!!」
「ひ………っ、」
みんなで画面に目を向けるとそこには、幽霊がこちらを見つめているシーンが写っていた
叫び声を上げたのは翔、息を飲んだのが善さん
千紘さんと俺は冷静に二人を見ていた
「ぷ……っ善さん、大丈夫ですか?」
「……うん」
大丈夫に見えない善さんは、ほとんど放心状態で画面に視線を送り続けている
翔は千紘さんにくっ付いてギャーギャー騒いでる
さっきの千紘さんが好きだという話を聞くと、なんだか意識してしまう。
「翔…暑いんだけど」
「俺熱い男ってよく呼ばれます」
「そういう意味じゃない」
ナイステンポの会話を千紘さんと翔で繰り広げているのを見て笑うけれど、善さんにそんな余裕は無いらしかった
少し可哀想だし、この間泣き出した善さんを見てちょっと反省したものの
こんな余裕をなくす善さんが見れるなんて…と思うと申し訳ないけど少し嬉しくもあった
「これ、あれだね。お風呂入るとき目閉じれないやつだね」
「ふはっ、子供ですか」
目に泡が入らないように、でも決して閉じないように洗う善さんが簡単に目に浮かんだ
その光景をぜひ、動画で送ってほしいくらいに面白いと思う
「え?小さい時から目開けてんじゃん」
「千紘……っ、」
ほぼ吹き出してしまった俺と翔は、もうホラー映画を見ている雰囲気ではなかった
腹を抱えて笑うような、そんな雰囲気で
「っ、ぅ………たまたま、見たらまた……っ」
ただ一人、善さんを除いては
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