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「んまー!」
出来上がったカレーを口に入れれば、翔がすぐさま叫ぶように言った
続いて善さんもカレーを口に運ぶけれど、その様子は翔とはまるで違っていて小さな一口だった
「うん、すっごく美味しい」
ふわりと笑ってそう言うと、千紘さんも翔もホッと息をついた
カレーは結局甘口で、正直に言えばすごく子供っぽい味付けになったし、野菜は不揃いだし、肉は炒めすぎて固い。
でも今まで食べたカレーの中で一番心に残るような、そんな味だった
「あはは、翔君すっごい食べっぷり。
見てて気持ちが良いね」
もう一杯目を食べ終えた翔は、皿に大盛りのご飯をよそりルーも溢れんばかりにかけた。
そしてそれを大きな口で食べ始める
「善さんが食べなさすぎるんですよ、細いから燃費良いんですか?」
「一般的に見ても翔の量は多過ぎるけどな」
米を翔の言う通り多めに炊いて良かった、そうしみじみ思った
千紘さんも細いのに案外食べることに驚いた。
でもそれは、善さんの為なんだとなんとなく分かってしまう
「千紘ってそんなに食べてたっけ?」
「美味しいから食べれちゃうんだよ。」
食べることは楽しい、そう体で伝えるように千紘さんは何度も笑いかけながら食べ物を口に運んだ
その笑いかける姿が、なんだか違和感を覚えた
「爽太?どうしたの?」
千紘さんを見つめすぎてしまっていたせいか、そう本人に声を掛けられる始末
でも、さっきの違和感はやっぱり消えなくて
「いや、美味しいなって……」
「ふは…っ、変なやつ」
変なのは、千紘さんもだろ。
そう思いながらも言えるはずもなく、言葉は飲み込んだ
「ふー、お腹いっぱい」
一切膨らむことのない薄いままの腹を善さんはさすりながら、そう言った
まぁでも、喜んでくれたんなら良かった。
「あ、いいよ。俺やるから」
俺が食器を持って席を立とうとすると、善さんの手がそれを阻止してするりと食器を奪われてしまう
その動作がとても自然で、すっと渡してしまう
「寝ててサボってた代わり」
そう言ってみんなの分の食器も持って行ってしまい、一人シンクに立った
善さんが気になるのなら少しは自由にやらせてあげた方が本人も気が楽になるんだろうけど、もう少し頑張らなくてもいいのに
「善さん、一緒に話しながらやりましょう」
「……本当に狡いね、爽太君は」
はにかむように笑う善さんの横に立ち、食器を拭きながら談笑をする
すると、直ぐに翔が千紘さんの手を強引に引き狭いシンクに男四人がぎゅうぎゅうに詰められる
「俺らも混ぜてって千紘さんが言ってた!」
「いや言ってないよ」
見えすぎた嘘につい、吹き出すように笑う俺も善さん
さっき千紘さんに対して感じた違和感は一度気にしてしまうともう、手遅れと言えた
「千紘ってムッツリだね」
「ぷ…っ、何言ってんの?」
善さんを見る、その目があまりにも優しくて
ただの、俺の勘違いなら良い。
そうであってほしいと、ほとんど確証してしまった疑問を押さえつけた
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