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「あれ、さっきのグループだ」
「さっきも見たの?………っあ」
大学の帰り道を善さんと歩いていると、さっき誕生日を祝っていたグループに出くわした
主役であろう人が大きい紙袋を持っていて、そこからはみ出したぬいぐるみが道に落ちてしまう
「あの、これ落ちましたよ」
善さんが直ぐに反応をして、ぬいぐるみに付いた汚れを軽く手で払ってから渡す
その人は振り返るなり顔を赤らめて少し恥ずかしそうにお礼を言った
「すみません……ありがとうございます」
「どういたしまして」
穏やかに笑ってからその場から離れようとした善さんの腕をその人が掴む。
……おいおい
「あの、私…今日誕生日なんです…っ」
しまいにはそんな事を言い出して、正直いい気はしない。
これが男女だったら堂々と付き合っている事を言えるのに、と思ってしまった
「あー、だからこんなに沢山荷物を持ってるんですね。…お誕生日、おめでとうございます」
「あの……っ」
サラリとそう言って、今度こそ離れようとしたのにまたも引き止められる
俺の方を一瞬見た善さんは酷く冷たい顔をしていて思わず息を飲んだ
「ごめん、友達が待ってるから」
次にはもう、いつも通りの暖かい笑顔を浮かべていた
けどあの表情が重なって見えて、それすらも冷たく見えるのはどうしてなのか
「爽太君、ごめんね」
「……いえ、全然。大丈夫です」
思い違いなのだろうか、そう思うくらい善さんはいつも通りだ
隣を歩く善さんのサラサラと揺れる黒髪を見つめながら、地面を進む
「善さんの誕生日っていつなんですか?」
「え……っ、と……何で?」
何で、と聞かれて思わず俺も聞き返してしまいそうになる。
今あった流れからしてこの話題は別に不自然じゃないし、頭がキレる善さんなら直ぐに理解してしまう気がしていたから
そう聞かれるのが不思議だった
「いや、さっきの子が誕生日でそういえば知らないなって思って……」
「あぁ、そういう事か」
隣を歩いていたはずの善さんは、俺よりも少し前を歩いて行く
それがなんだか切なくする
「10月16日だよ」
善さんは少し後ろを歩く俺に振り返りもせず、淡々とした口調でそう告げた
俺は途端、不安になって早足で歩き、善さんに追いついて顔を覗き込む
「あはは、どうした……」
「善さん、何かあった?」
やっぱり、その笑う顔は冷たく見えて
嫌な予感しかしなかった
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