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. 善side
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「善さんー、俺です」
朝自宅のインターホンが鳴り、出てみると聞き慣れた甘く低い声がした
「うん。今行く」
今日は母の命日だ。
お墓参りに行くと言えば爽太君はついて行く、と言ってくれて二人で行くことになった
「ごめん…お待たせ………っわ、」
「善さん。お誕生日おめでとう」
玄関を開けるなり突然抱き着かれたと思えば、次は耳から脳内に直接響くような声が聞こえた
それに顔を上げると少しはにかみながら笑う爽太君がいた
「……ありがとう」
少し肌寒い季節に生まれた俺は、今日までなんとか過ごすことができた
途中で何度も生きることを止めようとしたけれど爽太君に出会えたから生きていれば良いこともあるんだと、今なら思う
「えっ、と……どこの駅に行くんでしたっけ?」
少し頼りなくて、底なしに優しい爽太君がたまらなく愛おしい
それでいつも顔から溢れるように笑顔になる。
「あはは、木地谷駅って行ったでしょ」
ここから1時間半もかかるところだ。
わざわざ関係のない爽太君を連れて行くのは気が引けるし、申し訳ない気持ちで一杯だ
だけど、一人で行くのは怖くて、不安で
爽太君がついて来てくれるって言った時、どれだけホッとしたか
「あー、うん、そうでしたね」
何も言わずにほとんど一緒に歩き始める
少し背の高い頭のつむじはいつも見えない。
寝ている時にだけ現れるそれはなんだか可愛い
「善さん?…….俺寝癖治ってませんか?」
「ふっ、違うよ。つむじ見えないかなーって」
そう言うと不思議そうにしながら頭をもたげた
…別に見たかった訳じゃないんだけどな
そう思いつつも視線を向けると寝ている時にだけ見えるつむじが今は見えた
「善さんってつむじフェチなんですか?」
「えー?何それ。そんなフェチあるの。
あ、ちなみに俺のフェチはね……」
そんなくだらない話をして、笑いながら歩く道のりはとても短く感じて
楽しいけど、どこか不安で
だんだんと迫ってくる昔の記憶も
だんだんと迫ってくる未来の足音も
全部が想像できないことばかりで
耐え切れないと思った時は、きっと君に
甘えてしまうんだろうな
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