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. 善side
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「今から親子で話をするので、来て早々すみませんがお引き取り願います。
……ほら、早く来い」
父に腕を強引に引かれそうになり、背中に嫌な汗が流れた
すると爽太君は俺の肩ごとぐいっと引き寄せて父から直ぐに距離を取った
「っ、やめて………善さんは、物じゃない。
そんな風に引っ張らなくても歩けるし、意思だってある。親子なら子供の気持ちくらい考えたらどうですか」
腕には少し赤い跡が残ってしまって目にじわりと涙が滲んだ
「君に何が分かると言うんだね。こいつは……」
「一色善です。こいつとか、言わないでください。……失礼を承知で言いますけど、さっきのやり取りも、今のやり取りも側から見たら虐待にしか見えませんよ」
虐待、その言葉にピクリと体が動いた
「大丈夫……っ、虐待じゃない……っ」
その言葉に爽太君も、何故か父も驚いたように目を丸くした
それでも言葉を続けようと口を開く
「全部、俺が悪いから……お父さんが俺のことを恨むのは当たり前だけど、でも、俺はお父さんのこと怖いって思ったことはあっても一度だって、嫌いだって思ったこと…ないよ……っ」
殴られて、蹴られて、暴言を吐かれても
どんなにされても嫌いになんてなれるはずがなかった
それどころかどうやったら前のように笑ってくれるのか、どうやったら好いてくれるのか
お父さんに引き取られてからはそればかりを考えていた
「お前は………っ、もういい」
一瞬、傷ついたように歪んだ顔が
あの日手を振り払った母の顔にそっくりで
「待って……行かないでっ」
「来るな。」
そう言われてビクッ、と震えた体
それに父はより一層傷ついたように笑った
「俺も、資格などない」
その言葉にポロっと涙が溢れる
追いかけようとするのに、役立たずの足だ
なんで動かない
「嫌っ、行かないで…行くなよ…………っ、
また、置いてくの……?」
言葉は虚しく父には届かなかった
どんどん離れていく背中がとても小さく見えて
久しぶりに見たそれは、随分と丸くなった
「善さん………っ!」
そのまま崩れるように地面に座り込めばすかさず温かいぬくもりが触れた
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