アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
.
-
「…で、どこに行きます?」
俺と善さんの話題はもちろん、旅行についてだった。
爽太君の予定が空いてるかまだ分からないでしょ?と聞く善さんに何としてでも空けます!と返せば苦笑いをされてしまった
「特には無いけど落ち着いた所がいいな」
「んー、じゃあ京都とかどうですか?」
落ち着いた所と言えば、京都や奈良、箱根が定番だけれどパッと思いついた
けれど箱根は温泉、というイメージがあって大丈夫だと分かっていても提案するのは躊躇った
「わぁ、冬の京都って良いね」
「そうですね。夏だと暑くて大変だけど冬ならまだ平気そうですし」
一度中学の修学旅行で六月に京都へ行ったことがあるけれど、その時はとても大変な思いをした。
6月だというのに盆地の京都の暑さは東京とは比にならないくらいで、
汗で体にワイシャツを貼り付けたまま観光地を回った記憶がある。
「なんか良いね、こういうの」
「はい?」
善さんは嬉しそうに顔を綻ばせて、俺に視線を向けた
「どんな所へ行こう、とか何をしよう、誰と行こうとか考えるのが楽しいって事。
ま、誰との部分はもう決まってるけどね」
こうやって無意識に俺を喜ばせる善さんは相変わらず狡い
当の本人はそんな事を気にした様子もなく楽しそうに笑う
「はいはい」
「あはは、すっごい適当」
ケラケラと笑ってから、善さんはスマートフォンを取り出して文字を打ち始めた
そういや善さんが携帯を弄っているところ、数えるくらいしか見たことがない。
現代では電車の中じゃほとんどの人が携帯を見ているし、学校でも街中でもそれは同じだった
でも善さんがそうしているのはあんまり見なかった
「善さんって携帯普段触らないですか?」
「あー、うん。そうだね」
特に気に留めた様子もなくそう返事を返される
俺とするメッセージのやり取りはわりと早く返事が来るから、家ではしているのだと思っていた
「…じゃあ連絡取ったりとかは?」
「ふっ、今日はどうして坊やの日なの?
連絡は面倒だからあまり取らないかな」
最初の言葉はほとんど耳に入らずに、最後の言葉だけが頭に残った
面倒だ、そう言うのに俺との連絡は取ってくれているという事が嬉しかった
「あ、こことか良さそう。……爽太君?」
「えっ、あぁ、そうですね」
さっきの事を考えてぼーっとしていると、顔を覗き込まれてどきりと心臓が鳴った
この綺麗な顔が間近に来るのはなかなか堪え難い
「……善さんって指も細いんですね」
何気なく画面を操作する指が目に入ってまじまじと見れば、まるで女の人のような繊細さだった
白くて、細くて、長くて、一つ一つの動作が綺麗に見えるほどで。
「そうかな。でも指って脂肪つきにくくない?」
「善さんは指以外もそうですけどね」
そう言えば意地悪、と善さんこそ意地悪く笑ってからまた画面を見つめた
「俺、旅行楽しみにしてます」
すると善さんは俺もだよ、とふわり優しく微笑んでサラサラとした黒髪も一緒に揺れた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
123 / 138