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. 翔side
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「は……何言ってんの」
酷く動揺したように千紘さんは瞳を泳がせる
そんな顔を見るのはきっと初めてで、それがこの時だなんて少しショックだけど
「…俺、頭おかしいんですよ。
こんな事言う奴普通いないし、最低な事をしてるってのも分かってます。でも、俺絶対に大事にします」
「…駄目だよ。翔が本当に好きで居てくれてるんなら尚更駄目」
こんな時にまで、優しくしないで欲しい。
千紘さんはやっぱり狡い人だ
そんな風に言われたらますます好きになるしかないのに
「じゃあ、遊びだったらいいんですか」
「……翔」
困ったように制止する声が掛けられる
「千紘さんが俺に悪いとか、そういうの関係なしで揺れてくれてるんなら押し切ってでも付き合いたい。……叶わない人を好きでいるのは良いけど、だからって他の人を一生好きにならないのは辛くないですか?」
「……それ、翔だってそうじゃん」
瞳が揺れ動いたまま、俺を見つめて
今にも泣き出しそうなそれはキラキラと光る
「はい、そうですね。
…自分で言ったくせにって思いますけど、俺は千紘さん以外見えないんです」
「………っ、ほんと、自分で言ってたのに」
そう言ってとうとう千紘さんの目から涙が溢れる
親指でそっと拭うけど、次から次へと溢れては止まってくれない
「俺なら、千紘さんが泣く前に笑わせられる」
「………っ」
初めて見た千紘さんの涙は、他の人を想って流した涙で
痛いくらい握った拳は震えてた
「好きになってくれって言ってる訳じゃないんです。ほんの気まぐれでも良い、飽きたら離れても良いです」
「そんなの、無理に決まってんだろ……」
相変わらず優しすぎる千紘さんに、この場には似合わなすぎる笑みをつい零してしまう
「ふっ、……だから好きなんだ」
何度も何度も諦めようとしたけど、そんなの不可能だ
今目の前にいるだけで情けないほど心臓が暴れて、心乱されるのに
「俺はもし翔とそういう関係になったとしても、恋愛感情を抱ける自信がない。
それなら最初からやめた方がいい」
「……うん、やっぱり俺ら付き合いましょう」
話聞いてた?とやや呆れながら、それでも顔は切なげに歪んだまま言われてしまう
「はい、恋愛感情を持てないんですよね?
今その人しか見えないのはその人しか見てないからです。…前は気にしなかったニュースでも、一度気にし出すと気になることってよくありません?それって意識を初めてその対象について持つからなんです」
「うん………」
街中で歩いていても、千紘さんと出会う前は何とも思わなかったのに
出会ってから周りを見渡せば
黒髪、同じ身長、似た服装
それらに全て意識を持って行かれてしまう。
「だから、俺を見てください」
最低で、自分勝手な願い。
「………翔」
縋るように抱き着かれたそれは、否定とも肯定とも言えないが
これからの俺たちの関係が今までとは明らかに変わって
引かれていた一線を取り払ってくれたような気がした
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