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「顔を上げろ」
そうは言われても俯いたせいで堪えていた涙は頬を伝っていて情けない顔をしているし、何よりさっきの怒り具合からしてとても怖い。
殴られたりするのかも。いや、一発殴るくらいじゃ済まないかもしれない。
死ぬ寸前、もしくは死ぬまで痛め付けられるのかもしれない。
そう悪く考えるとキリがなくてますます恐怖で。
「顔を上げろ」
同じ台詞が聞こえて、もう覚悟を決めるしかないと諦め、次々涙が溢れてくる情けない顔を上げた。
大きな手が頭上に見えて、振り下ろされて…と思って目を瞑ったのに想像した衝撃は無く、手のひらをポンと優しく乗せられただけ。
びっくりして「え?」と小さな声を上げ見上げると、さっきまでの凍りつくような空気じゃなくなっていて。
それでもまだ怒っている感じではあるけれど。
「あいつは俺と違って優しい。惚れたのか」
「え、や…いやっ、違っ」
だからなんで惚れたとかそういうことになるんだ。
俺は男。藤堂さんも錦さんも男。でもって俺はホモではない。恋愛対象はお互い女のはずだ。
「お前は初対面の奴に自分から話しかけた。それもその相手はヤクザだ」
いや、ヤクザなのは貴方だって…
と思ったのは言わない方が賢明か。
「同じヤクザでも俺はお前の主人だ。何故俺に聞かずに奴に聞いた。俺に聞く方が早いだろうが」
「や…忙しそうだから、悪いなって…っ。……あ、ハンバーグ…嫌い、だった…?ごめんなさいっ」
本人に聞かずに作ったせいで、実はハンバーグが嫌いだったのかもと後悔し始めた時。
「いや、そういうことじゃなくてだな…。はぁっ…これからは俺以外の奴に聞くな。分かったか?」
「はい…っ、あの…錦さん?にごめんなさいって伝えてくださいっ」
「はぁ?何故お前が奴に謝る必要がある?」
「だって…!藤堂さんの部下さん?に気安くお話しちゃったから」
何故か深い溜め息をつかれて、恐る恐る視線を上げるとさっきの凍りつくような空気ではなくて。
和やか…といったら言い過ぎかもしれないけれど、藤堂さんから怒りは感じられない。
でも溜め息をつくってことは怒りを通り越して呆れているのかもしれない。
「少し待っていろ」と言い残してリビングを出て別の部屋へ消えてしまった。
ドキドキしながら藤堂さんが戻ってくるのを待つ。
許してもらえるのか。相手はヤクザだ、そう簡単に許してもらえないだろう。
殺されはしないだろうけど、少々痛めつけられるくらいはするかなぁなんて考えてみたり。
指を切り落とされたりとか?爪剥がされちゃったり?煙草押し当てられたり?
俺にとっては少々ではない痛みばかりを想像して膝を抱える。
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