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(......失敗した)
ほんの少しって思ったのに、逆に重い話題になってしまった気がする。だけど、山田君は箸を持ちながら『んー』と真剣に考えてくれた。
「家族かー......俺の家族は、親父とお袋と、姉ちゃんと妹だな。女二人に挟まれてるから、こき使われまくってるし、ムカつくこともあるけど、やっぱいないと駄目っつうか、落ち着かないっていうか。居ると安心する存在?」
眉間にしわをつくりながら答えてくれた山田君。こんな変な質問にもちゃんと答えてくれる山田君は、本当に誠実な人なんだなと思う。
(でも、やっぱり家族ってよく分からないな......)
山田君ちの家族は、血が繋がっていて側にいると安心する存在。
俺とお父さんはそんな関係じゃないし、もちろん先生だって違う。
そう考えると胸がチクリと痛んだ。だけど、考えてもらったからにはお礼を言わなければと口を開いた瞬間に、山田君がはっとしたように手を叩いた。
「あ、でも、家族ってそれだけじゃないよな!」
「え......?」
首を傾げる俺に山田君はとびっきりの笑顔を見せる。
「俺さ、隣に住んでる兄ちゃんのこと家族みたいに思っててさ。昔っから世話焼いてくれて、めっちゃ大好きなんだ!」
「隣の......」
「おう!もちろん血は繋がってないけど」
血の繋がりがない人を家族と言うこともあるんだと、初めて知った。いや、もちろん知識としてなら、養子とか色々あることは知っていたけど、身近な人から直接聞くと説得力が格段に違った。
(......じゃあ、俺も先生と家族になっても良いの?)
教師と生徒。従兄弟同士。
それだけの関係で、甘えて良いのだろうか。
そんな考えを再び山田君が後押ししてくれる。
「結局は、好きか嫌いかなんじゃない?」
好きか嫌いか。
先生のことはずっと苦手だった。キラキラしてて、世界の中心にいるような人で、自分とは別世界の人。
でも先生の優しさに触れて、苦手だけじゃなくなった。好きか嫌いかと言われれば勿論......答えは分かりきっている。
「......山田君、ありがとう」
少し胸がすぅっと軽くなった。
ぺこりと頭を下げると、山田君は嬉しそうに笑ってくれた。
「参考になったか分かんないけど、どういたしまして!」
「ううん。すっごく、助かった」
「そっか!良かったー!そんなら、弁当食っちゃうか!」
山田君が再びお弁当そ食べ始めたのに続いて、俺も弁当の蓋を開ける。
視界に広がったのは、緑や赤や黄の色とりどりの世界。
中央では4本足のタコさんが、こっちを向いて笑っていた。
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