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潮風の声
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ペルセポネーはギリシャ神話では
春の女神だった。冥界の神、
ハデスに連れ去られて無理矢理
結婚させられてしまった女神様だ。
ペルセポネーは冥界の食べ物、
ザクロを食べてしまったため地上には
戻れなくなってしまう。
それでもあんまりペルセポネーが悲しむから、
ハデスは1年の3/4だけ地上にいることを許した。
ペルセポネーが地上にいる間は花は
美しく咲き、鳥も人々も歌い、太陽が
降り注ぐ素晴らしい季節だった。
それが今の春夏秋。
それでも残りの1/4は冥界にいなければならない。それが、今の冬らしい。
「だから【春】ってつくから
ペルセポネーみたいだなって思ったわけ。
それに、春がいると楽しいから、
俺にとっては【春】みたいだし、
春がいないとまるで冬のように
寂しい気分になるからな。」
ニッと笑った後に、リーはじいちゃんに呼ばれ、
厨房に消えていった。
その時の言葉がよくわからなかった俺は、
なんとなくだけど、リーも俺と同じように、
一緒にいると楽しい気持ちだったらいいな、
と軽くとらえていた。
リーが来て半年くらいがたった
夏休みも終わりに近づいたある日、
その日は、じいちゃんの知り合いの人に
会いに行くため3人で出掛けることになった
山に囲まれていたといってもいい田舎から、
数時間かけて海沿いの大きな都市に来た。
じいちゃんはリーと時間を潰していて、
と言って、いつもとは違うキチンとした格好で
街中に出ていった。
「春、じゃあこの近くに水族館が
あるみたいだし 行ってみる?」
「水族館…!いく!」
夏休み終盤といっても混んでいた水族館で、
リーはずっと俺の手を放さないでいてくれた。
大きな水槽の中の魚や、イルカのショー、
ペンギンの散歩など、俺はリーといるのが
楽しくて、始終笑ってはしゃいでいた。
水族館を出たあと、すぐ近くの海に行った。
俺の、左手はしっかりリーが繋いでくれ、
右手にはリーが買ってくれた少し大きい
ペンギンのぬいぐるみがいた。
リーは今日、色んな綺麗なお姉さんに
たくさん声をかけられていた。
リーが、すごくかっこいいからだと思う。
横顔ジーッと見ていたのがバレたのか、
リーがクシャッと笑いながら頬を撫でてきた
「どうした?」
「リーはとってもかっこいいから、
おれも大きくなったらリーみたいになる!」
キョトンとしたリーは次の瞬間には
お腹を抱えて大笑いした。
「ぷふっ!春…!はは、お前
ほんっとかわいいなぁ!
でーも、ダメだよ。俺みたいになっちゃ…」
どうして?
そう言おうとしたけれど、いつものように
頭を撫でられ、結局その問いかけは
聞けることはなかった。
その後も、二人で砂浜に座って、
ぼーっと海を眺めていた。
「リーの国はこの海の向こうなの?」
「俺はね、この海のずーっと、ずーっと、
向こうの大きな大陸を通り越した、
日本と同じ大きさの島国から来たんだよ。」
「うーん…わかんない。」
そう答え首を横に振ると、
リーは苦笑いしながら、そりゃそうか。
と呟いた。リーは海から俺の方に視線を移し
こう言った
「春、俺は来年の桜が咲く前には
帰らなきゃいけないんだ。」
「リー、いなくなるの?」
「うん…。寂しい?」
コクンと頷くと、リーはギュッと優しく抱き締めてきた
「あと半年だけど…たくさん思い出つくろうな」
お前のこと、本当の弟みたいに思ってるからさ。
その言葉と潮風は
俺は今でもずっと覚えている
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