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エリックの昔話
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うん、まぁ…アーサーはスイーツの
悪魔に取り付かれたのかもしれない。
そう思うようにしたんだ、両親も、俺も。
すぐにその熱も冷めるだろう、って
その考えが甘かった
アーサーは卒業を控えた年の正月に、
1度帰って来た。多分この年にシュンと、
シュンのおじいさんと日本にいたのかな。
シュンと別れたその便で、
帰って来たのかもしれない。
アーサーは家に帰ってくるなり
とんでもないことを両親に言ったんだ。
「このまま製菓の道を極める。大学にはいかない」
ってね、驚いたよ本当。
そこからは父親と大喧嘩、父は最後に
アーサーに言ったんだ。
「お前はもうリホーウェン家の人間ではない。
もう、二度と帰ってくるな」って。
その後アーサーは家を出てった。
卒業しても帰ってこなかった。
むしろ、本当に君は消えたようだった。
蒸発っていうのかな?
「はぁ!?」
シュン、落ちついて。
…俺も今彼がどこにいるのかわからない。
まぁ【アーサー・リチャード】なんて、
名前で世界的パティシエとか言われてるのが
本当皮肉的だよね。
拠点がどこかもわからない。
彼の本当の名前の綴りは【Richard】
なんだけど今はRをLにして【Lichard】だって。
馬鹿馬鹿しい。
あぁ、ごめん。話がそれたね…
ここまでの話で気づいてると思うけど、
アーサーに俺は敵対心がある。
兄弟ってそんなもんじゃないかな。
追い付きたいけど偉大すぎて追い付けない。
それでも親は比べてくるから追い付き、
追い越そうと必死に頑張る。
だからアーサーがチョコレートに
惹かれるのと同じように俺も一緒に
スイーツに惹かれていった。
…これも半分ライバル心があったのかな
公爵の爵位は本来なら長男が継ぐはずなんだ。
でもその長男は蒸発。
それじゃあどうする?
次男だ。
俺はある日、聞いたんだ。
「今からエリックに公爵としての
全てを叩き込まなくては。学校も……」
兄さんは好きなことができたのに
どうして俺はできないのだろう?
俺も兄さんのように好きなことがしたい。
俺もアーサーのように製菓の勉強がしたい。
そう思って俺は、フランスの叔父に
相談したんだ。母さんの妹である人の夫で、
イタリア人。彼は美術商で世界中を
旅している人だった。
「ん…?まてよ、もしかして、さ」
…セ・ビアン。さすがシュン鋭いね。
叔父の名前は【シャルル・エティエンヌ】
ルイのお父さんだ。ここではルイと俺が
従兄弟同士、ということは置いておこう。
彼は快くウチに来ればいいと言ってくれた。
12歳の俺の一大決心だよ。
今まで両親の言いつけをしっかり守ってたけれど
始めて両親に逆らったような気分だった。
それから両親に内緒で受験し、合格した。
俺は相談なしにフランスに行ったんだ。
両親はカンカンだよ。でもまぁ、
ここで俺を勘当でもしてしまったら
公爵の爵位を継ぐ人間がいなくなる。
だから今は何も言ってこないよ。
…俺も今年で卒業する。
だから両親から電話が来たんだ。
それが今日列車の中できた電話だ。
「将来について話があるから今年の
クリスマスには帰ってきなさい。
シャーロットもお前に会いたがっている、」
それが、両親からの言葉だった
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