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クイーンズイングリッシュ
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「今!エリックと!降りるから!待ってろ!」
彼には珍しく大声を出す姿に思わず
クスリと笑みがこぼれた。
「あら、とても綺麗ね」
「え?」
突然声を掛けられ振り向くと、そこには
観光客と見られる初老の女性が立っていた
綺麗…あぁ、シュンのことか
「えぇ。彼、とても美しいですよね。
俺もいつも思ってます」
そう答えると、女性は「あら」と言い、
口元を隠してフフフと、上品に笑った。
何故女性が笑ったのかわからず少し首を傾げると、
その女性はニコニコしながらこう言った
「あら、ごめんなさいね。
彼の発音が素晴らしいわね、と思ったの。
美しいクイーンズイングリッシュだわ。」
あぁ、シュンの発音の方か…
シュンの容姿ことだと思い、あんなに
自信満々に言ってしまった……
勘違いをした自分に少し決まりが悪く、
老婦人に苦笑いをこぼした。
そんな俺を見て上品に微笑みながら
老婦人は言った。
「あなたも素敵なクイーンズイングリッシュよ。
お二人とも育ちがいいのね。それに…
東洋の方かしら?彼も綺麗で可愛らしいわねぇ。」
「…えぇ、」
「お二人で旅行かしら?」
「いえ、学校の友達4人で旅行なんです」
「そうなの…あなた、ここの【願いの階段】の
話知ってる?」
「いえ…知らないです」
そう言うと老婦人は白の階段の上から
5段目あたりを指差した。そこには小さな、
人の集団があった。その人達はそこから何か
大きな声で言っていた。
「あの上から5段目には特別な魔法が
かかっているの。あそこから
【自分の内に秘めたる思い】を声に出すと、
願いが叶うって言われてるのよ」
それは初めて知ったことだった。
老婦人はニコリと微笑み「あなたも
試してみたらいかが?」と言った。
自分の内に秘めた思い、か…。
「まるで、おとぎ話のようですね」
「あら、信じてないのかしら?
信じてみないと、
夢も、愛も、何も始まらないわ」
強くそう言い切った彼女はどこか
若々しく気が強そうな若い娘の姿が見えた。
「…実はね、50年前の今日結婚記念日だったの。
私、ここで夫にプロポーズされたのよ。
【俺を信じてほしい】って。」
少し寂しそうに空を見た老婦人に、
もう彼女の夫はもう、会えない人なんだと察した。
「そんな顔なさらないで。
私幸せだったわ。とても…」
そう言うと老婦人は、クスクスと可笑しそうに笑い。
「お嬢さんがお待ちだわ。」と、俺の後ろに
目線をやった。
そこには、少し拗ねている様子のシュンが、
ヘリに寄りかかって立っていた。
「あらあら、ごめんなさいね引き留めてしまって。
アナタみたいな若い紳士のような方と話せて
とても楽しかったわ。」
「私もですよ、レディ。」
礼儀正しく老婦人にお辞儀すると、
とうとう痺れを切らしたのかシュンが
後ろから声をかけてきた。
「エリック!下行ってるからな!」
今すぐ彼のそばに行きたい
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