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可愛い女の子
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──あの日、シュンが一瞬
泣きそうな顔をしたことに気づいていた。
「俺は…、わからない……」
俺が紡いだ言葉は届かなかったのかもしれない
シュンはいつも真っ直ぐに物事を言う人だ。
だからそんなシュンの姿を見たことがなかった。
シュンがそう言う理由は……わかる気がした。
「大丈夫だよ。返事が欲しいとかじゃないから」
「ごめん… …」
謝らせてしまったことに悲しくなった。
もしかしたら同じ気持ちなのかもって、
勝手に思い上がっていたのは
俺だけなのかもしれない──。
***
「え?」
12月24日
世間はクリスマス・イブで
多くの学生がクリスマス休暇を取り、
実家に帰る人が多かった。
そんなクリスマスイブ。
早朝の正門前の俺の第一声から始まった。
なぜなら…
ルイの隣にはシュンではなく、
綺麗な黒髪の可愛い女の子がいたから。
かなり、いや、ものすごく可愛い子が。
動揺しないように咳払いをし、
ニコニコしているルイを見る
「ルイ、シュンは?」
そう言うとルイは一瞬【無】の表情になった
「…エリック~、目の前に物凄く
可愛い子がいるのに何とも思わないのぉ?」
ああ、そうか
スルーしたのは、女性に失礼なことだな…
そしたらそれは紳士の心に反するよね
「いや、すごく可愛いらしいレディだと思うよ。」
「シュンがいるのにねぇ。この浮気者。」
ルイがニコニコと笑ながら毒を吐くから余計怖い。
もう一度その子に目をやると、
清楚で女の子らしい服装、スカートから伸びた
スラッとした足が綺麗だった。
ほんのり赤い唇と雪のように白い肌、
クルリとゆるく巻かれた黒髪に綺麗に
メイクされたシュッとした目元は本当。
シュンと、同じくらい
可愛いと思う
「天使みたい…」
無意識に口から出た言葉
「バカかお前」
可愛らしい唇から出た暴言
「いつまで見てんだよ」
シュンの声のその女の子がイライラしているのが
わかる。けれどそれ以上に頭が
今の状況に追い付いていなかった。
「ん?え?シュン…?」
「はぁ?俺以外誰がいんだよ」
「だ、だって…髪…」
自分でもそこじゃないだろ、と思った。でも
長いシュンの髪を指差しながら言うと、
ルイは吹き出してお腹を抱えて笑いだした。
「はは、ぷっ…ふはっ、エリックって天然なのぉ?
ウィッグだよぉ~!」
大笑いしているルイとは他所に思いっきり
しかめっ面をしているシュンは
可愛さが台無しだった
そのシュンはズイッと携帯の時計画面を
出してきた。時刻は7時30分を過ぎていた。
ルイがその意味を理解したかのように頷いた
「そ、そうだねっ、シュン…ふふ、エ、エリック、
電車乗り遅れちゃうよ~…ぷふふ…」
「笑いすぎだろ」
軽く小突かれて「ごめ~ん」と謝るルイの口元は
まだ笑っていた。ルイは自分のポッケから
紙を取りだし、渡してきた。
「これ、読んでねぇ」
「なに?これ…」
「シュンが説明してくれるよ~」
「…わかった。じゃあシュン行こっか」
シュンはコクリと頷くと俺の隣に来た。
どうしよう。本当の女の子みたいで
どう接すればいいかわからない…
「ばいばぁい~」
ブンブンと手を振っているルイに
小さく振り替えしているシュンを見る
あれ…どうしてシュンは女の子の
格好をしているのかな?
俺がその答えである、【とんでもない作戦】を
聞くのは、パリとイギリスを結ぶ高速列車、
ユーロスターの海底トンネルの中だった。
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