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「しかし、いや、まて…さっき
君が言っていたこの、チョコレートドームが
私とエリックとはどういうことだ?」
「それは…」
シュンは1度俺を見ると、
また父さんに向きなおった
「…エリックを、ちゃんと見てください」
「…なんだと?」
突然のシュンの発言に父さんの
眉間の皺が深くなり、ピクリと眉が動く
「エリックが、前に言ってました。
『誰もが自分を兄越しに見る。
自分自身を見てくれない』って。
俺兄弟とかいないからそういうの全然
わかんないけど…多分、親からも
見てもらえないのはつらいよな、って
勝手に思いました。」
覚えてたんだ…そう思ったのと同時に、
シュンがそのことを考えていてくれたことに
こんな状況でも胸が暖かくなった。
「私は…エリックを見ているし、
評価もしている。だからエリックの将来を
第一に考えて一流の大学に進み一流の仕事に
就くことこそがエリックの幸せだと!
きちんと考えているのではないか!」
父さんとシュンの間にピリピリとした
空気が流れる。さすがに止めに入ろうと
口を開きかけた瞬間、シュンが小さく、
はっきりと言った
「…それは、あんたの本心じゃないだろ」
「どういう、ことだ?」
皿の上でゆっくりと
少しずつ、少しずつ、アイスが溶けていく
心の中のわだかまりが溶けていくみたいに。
「一流の大学、聴診器一流の仕事…
確かに幸せかもな。それに表面は、綺麗だ。」
「けど中身は?6年前、夢を追いかけて
家出した息子を6年間待っていたあんた自信…
リホーウェン家当主じゃなくて、
エリックの父親としての本心はどうなんだ?」
「私、 は…」
シュンから目線を外し、
初めてアイスの目をやった父さん。
あの父さんが、下を向いた。
シュンはそんな父さんを見て、
目を伏せてから俺を軽く睨みながらこう言った
「お前もだエリック。どこまで
いい息子を演じたいんだよ?もういいだろ。
表面だけの関係なんて。壊せよ、お前の中のもの」
壊せ
そういったシュンの目は
恐ろしく澄んでいた。
俺の、中のものを?
「ぶっ壊して、砕けて、直んなかったら
それまでだけど…お前はそうじゃないだろ?
お前は…エリックは、それでも
拾って繋げることができるんだから。」
俺にだけわかる、
綺麗な笑顔を一瞬だけ見せたシュン
俺の背中を、何かが押した気がした。
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