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また、帰ってこい
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時刻は、もう4時だった。
あたりはもう薄暗くなり、風も冷たくなってきた。
そんな寒空の下、わざわざ外に出て
見送りをしてくれるエリックの両親。
お母さんの方は「泊まっていけばいいのに」
と言っていたけれど、ロンドン市内に
ホテルをとったからその誘いには応じなかった。
せめて見送りでも、と外まで出てくれた二人。
特にお母さんは俺にずっと付きっきりだった。
エリックはお父さんと何か話していたけれど、
さっきの固い空気はなく、ただの親子としての
柔らかく、暖かい空気が流れていた。
「それにしてもシュンちゃんは綺麗なのね…
本当に女の子みたい!」
「…あの、いつから気づいてましたか?」
思いきってそう聞くと、エリックの
お母さんは目をパチクリとさせ、
可笑しそうにクスクスと笑った。
「最初に見たときからよ。
だってあまりに可愛いくて…本当に女の子?って
疑っちゃうわよ」
「可愛く、ないですよ。」
この親子は似ている。
褒め殺しされそうになる。
「シュンちゃん」
ふと、笑うのをやめたエリックのお母さん
「エリックを…よろしくお願いします」
少しだけ寂しそうな眼差しでそう言ってくる
エリックのお母さんに、俺は
思いを込めて大きく頷いた。
***
ロンドンに向け静かに走る車。
その中で一言もまだ喋っていないけれど、
手だけはしっかりと繋がれていた。
1時間と少し走り、ロンドンまで
送ってもらった車を降り、お礼を言う。
静かに走り去った車を見送った後、
エリックが口を開いた
「父さんがさ、『また、帰ってこい』
って…言ったんだ。最後。」
車に乗る前に小さくだけど、確かに聞こえた。
エリックのお母さんも言っていた「頑固な
だけで、ずっとエリックのこと心配してたのよ」
と苦笑いしていた。
きっと不器用な人なんだろうな。
「…よかったな。」
俺がそう言い終わらないうちに
グイッと腰を引き寄せられ、
エリックに抱き締められた
ひどく長く感じた1日。
エリックの匂いでようやく、
息継ごをしたような気分だった。
「ありがとう…シュン
本当にありがとう……」
なんとなく涙ぐんでいるのがわかるけど、
気づかないふりをしてやる。
今日は、頑張ったから
お疲れさま
その、意味を込めて、
少しだけ背伸びをして
俺も抱き締め返した。
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