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ゼン・ファン
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***
オレが製菓の道を選んだ理由?
特に、理由はなかったよ。
ただ単純に、小さい頃ばあちゃんの家に
年に一度帰った時に食べた水あめが
美味しかったから、オレもあんなお菓子が
作れるようになりたいって思っただーけ。
そしたらたまたまイギリスに住んでいた幼馴染が
製菓学校の名門学校を受験するっていうもんだから
たまたま暇つぶしに便乗して受けたら
たまたま合格したんだよね
そのままのらりくらり6年弱
頭を使えば製菓はゲームのようだ。
攻略して、レベルを上げてボスを倒す。
頭を使うのは嫌いじゃない
誰かと話すときも授業も
それだけだった。
けれど、小さい頃から一緒に育った、
俺の将来の主人である坊ちゃんに誘われて
校内大会に出たら入賞した。
そしてそしてそこに颯爽と現れたのは
同じ東洋でお隣の国から来た【天才】
俺達の世界ではかなり有名な存在だった
その子は噂から聞くイメージとは程遠かった。
聞いてた限りでは男らしい人想像したけれど
実際は細くて、小柄で、真っ白な肌に黒い髪と
透き通るような目を持つ、そこら辺の女より
何倍も綺麗な子だった。
でも口は悪いし、かなり横暴
けれど、腕は確かだった。
すごいんだよ、本当に
一度作り始めるとその集中力は並大抵の
ものじゃない。そして器用で繊細な物を
次々と生み出す手先
1つ下の彼は、遠い雲の上のような存在に感じた。
それと同時に周りにこう思わせる
自分は、パティシエとしてなんて
非力なんだろうってね。
羨望とか嫉妬とか憧れなんて通り越した『脱力感』
なのに
「ゼン、信じてるからな」
ポツリと呟かれた
たった一言の言葉
どうして、どうして
本当はワールド・パティスリー・アワードだって、
誘われたから出てみただけ。
優勝するかどうかなんて興味なかった
そんな、軽い気持ちだったはずなのに
雲の上の人だと思ってた美しい
この天才にそんなことを言われたら
全力を出さなきゃって、思っちゃうじゃないか
この子のために、オレの力を全てを
スイーツに注ごうって、思っちゃうじゃないか
だって、初めて
何の取り柄もないオレを
『信じてる』なんて言われたのだから
***
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