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2週間後と再会
-
***
フランス大会から2週間の2月の初めの土曜日
俺は1人でパリの街中にいた。
「バカエリック…」
ポツリと呟いた言葉はフランスで
一番寒い2月の風に掻き消された。
***
___1時間前
「本当にごめん、シュン!!!」
「はぁ?」
学科棟に繋がる廊下に私服の俺と
制服のエリックがいた。
本当は今日の土曜日、2人でパリまで
出掛けようと約束したいたのだ。
なのに、なのに…!
「ごめんね、シュン…課外授業が
今月から入ることまるっきり忘れてて…」
「まぁまぁ、秀才過ぎてそこまで課外授業なんて
頭になかったんでしょー?」
ヒョコリと横から顔を出したゼンも同じように
制服に教科書等を大量に持っていた。
「本当にごめんシュン…
この埋め合わせはいつかするから!」
本当に申し訳なさそうに頭を下げる
エリックの誠実さに、一瞬で怒りは消えた。
「はぁ…いいし別に。1人で行くから。
言ってた紅茶の茶葉も、買ってくるから」
「1人で!?ルイは?」
「補習だってさー、じゃあねシュンちゃん。
エリック、先行くわ。遅れんなよー」
俺の頭をぽんっと撫でると、口笛を吹きながら
立ち去ったゼンの背中を2人で見送る。
別に1人でも平気だ。
今までもそうだったし…
「じゃあ、寒いからこれ。」
そう言うとエリックは自分の白マフラーを外すと
俺の首にマフラーを掛けたと思ったら
そのままグイッとエリックの方に引っ張り
キスをしてきた。
エリックの優しい、太陽の下で干したような
暖かい香りが鼻を掠める。
「っ…ん、!」
寒い冬とは真逆の優しい、優しい温かいキス
エリックは唇を離すと、少し心配そうに微笑み
「気をつけて、いってらっしゃい。
暗くなる前に帰るんだよ?」
「お前は俺の母親かよ…ばか」
俺がそう言うとエリックはもう一度、
額に軽くキスをしてきた。
***
結局1人でふらふらとウィンドウショッピングを
しながらパリの街中を歩き、エリックが今日
来たかったと言っていた紅茶の茶葉専門ショップの
前まできた。
「ここだよな…?」
急いでいたのかフランス語で走り書きされた
地図に首を傾げる。その下に少し乱雑に
書き殴られた2つの茶葉の名前
窓の外から見る店内はどこかイギリスを
思わせる雰囲気だった。
入ろうか、と紙にもう一度目を向けた瞬間
「春」
ひさびさに聞いた日本語
声がした
懐かしい
8年間探していた声
窓に映るのは
スラリとした長身に
本当は今日、ここにいたはずの
あいつと同じブロンドの髪
でも、瞳は違う
赤く、燃えるようなルビーのような瞳
「リー…?」
きっと、なにかの夢だ。
そう思って振り返ると
そこには、彼がいた。
「久しぶり、春」
流暢な日本語でそう言い、ニコリと微笑む
リー…
いや、
アーサー・リチャード・リホーウェンが。
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