アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
言葉を選ぶ
-
学校でも1番収容人数がある調理室での授業
他の三年の友達と喋りながら教室に入るとどのテーブルも2人組だった
「今日はシェールか、じゃあなエリック」
「スガワラとなんて本当羨ましいよ」
小突いてくる2人の友人に苦笑いをする
…純粋に喜べたらいいけど
仕方なく彼を探すと、たくさんの髪色の中で一際目立つ黒い髪…案の定後ろのテーブルで外を眺めているシュンがいた
「やぁ、シュン。今日も早いね」
そう挨拶しても彼は軽く「うん」とだけ答えた。…今日はまだいい。ひどい時は返事すらしてくれない時もあるから。
この次は、何を言おうか?
次の言葉を探すうちに鐘がなり
先生が入ってしてしまった
…俺はいつからシュンに対して
言葉を探すようになったんだろう
「今日はバーチ・ディ・ダーマを作ります」
初老の男性の先生が一番前の大きな調理台に立ち
生徒達を見渡す
「今日は全学年合同…えぇと、何人でしたかな?」
「60人でシェールは30ペアです」
初老の先生に1番近いテーブルの1人がはきはきと
答える。2年生同士のシェール
トーマス=ポールとクロード=アシル だった。
「さすが、2年生お2人、息が合いますねぇ」
この2人は、確か…
「まぁ、昨年の校内コンクールではどこかの
シェールにわずかの差で負けましたけどねー?」
トーマスがそう言うと隣で、クスクスと
クロードが後ろを振り向きながら笑う
そうだ、2位だったペアで…
聞こえるような大きな声で言われた嫌味
恐る恐る横を見る
でもそこにはさっきとあまり変わらず、
相変わらず不機嫌そうな顔で腕を組み
黒板を凝視しているシュンがいた。
初老の男性の先生はそんな嫌味も気づかず
相変わらずニコニコと微笑みながら、
後ろの方の俺とシュンのテーブルを見た
「そうでしたねぇ、さて、1位だった
Mr.スガワラとMr.リホーウェンはこの前の
テストでも優秀でしたね。お互いでは総合得点は
トップとその次…素晴らしいです」
今それ言いますか先生。
はは…と愛想笑いをするけど思った通り1番前の
席の2人は恨めしそうにこっちを見てるし
シュンは相変わらず眉一つ動かさなかった。
「では、Mr.スガワラ、バーチ・ディ・ダーマを
説明できますか?少し難しいですよ…」
そう問われ
間が空く
返事もしないシュンに、チラリと横を見る
「…シュン?」
「…え?」
名前を呼ぶと、急にパッと顔を上げ、
俺を見たシュン
…もしかして、?
シュンに、限って話を聞いてないなんてこと…
「シュン、バーチ・ディ・ダーマの説明って…」
小声でそう教えると、シュンは
何故か一瞬固まった後、前を向いた
「先生、さすがにスガワラでも
難しいんじゃないですかー?困ってますよー?」
クスクスと笑っているのはクロードと
トーマスだけだとしても、シュンが
悪く言われるのはイラッとした
でもシュンは、その言葉が耳に入らなかったのか、
彼らの笑い声を制するようによく通る声でこう言った
「イタリアのお菓子です。【貴婦人のキス】
という意味の、チョコレートを挟んだ
アーモンド風味のひとくちサイズクッキー
…ですよね先生」
「素晴らしい、Mr.スガワラ。
よく勉強していますね」
小さな拍手が起こっても、
前の席の2人が凄い形相で睨んできても、
まったく興味がないって顔を貫くシュン
…あれ、違う。
もしかして、シュン………
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
137 / 232