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効きすぎたスパイス
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────1週間後
【慣れ】というのは本当に恐ろしい
知らず知らずのうちに体を、心を、
すっかり変えてしまうのだから
「はぁぁ!?何それ!?」
ゼンが勢いよく立ち上がったせいで、
ガタンッと、ゼンが座っていた椅子は
派手な音を立てながら後ろに倒れた
「何もそれも…そのまんまだ。」
感情も抑揚も篭っていない彼のその声に
ピクリと、無意識に反応する自分
……いや、前言撤回。
慣れてなんかいない
丸いテーブルを囲んで斜めに座ってる彼と
ギクシャクとした空気になってから2ヶ月が
たとうとしているなんて。
その中で話さなくなったこと、触れなくなったこと、俺に対して笑ってくれなくなったこと。
どれ一つとっても慣れてなんかいなかった
むしろ心の中の穴が広がっていく感じだ。
「だって、急に内容変更なんておかしいデショ!」
バンッとゼンが机の真ん中に置かれた紙を叩く
その紙にはこう書かれている
【ワールド・パティスリ・アワード〜
ヨーロッパ大会における大会内容の
変更について………】
ヨーロッパ大会を今週末に控えた俺達は
今ごろになってようやく作戦会議として
集まることができた
俺とシュンによる不穏な空気のまま話し合いを
しようとした所に、顧問教師が入ってきて
この紙を突きつけ、簡潔に変更内容を話していった。
変更内容はこうだ。
・ヨーロッパ大会では持ち込み制であったものを
当日大会会場作製に変更すること
・その際、出場者はチーム代表2名であること、
また、その者は各国の製菓連盟が推薦申込と
すること、辞退は原則認めないこととする。
・危険などの際であっても、補欠人員は認めないこと
・大まかなテーマは[信仰]で変わりはないが、
更に詳しく採点基準を定めた小テーマを
当日発表すること
・最終決戦である世界大会までの出場権獲得は
上位2チームであること…etc
急な変更に、俺達だけでなく各国の
代表チームが困っているはずだ。
そしてなにより……
「しかも……フランスが決めた代表が
シュンちゃんとエリックだなんてな」
フランスの製菓連盟が推薦したのは
俺とシュンだった。
それはきっと、この場にいる全員が
1番心配しているところだった
チラリとシュンを見ても、無表情のまま腕を組み、
紙を凝視している所からは何を考えているの
か見当もつかない
「実力で決めたなら、妥当だよぉ、ゼン。」
「それは!…そうだけどサ」
ゼンが言ってるのは、きっとまた別なこと
今の俺とシュンの状態で、果たして本当に
チームとして成り立つのかを心配しているんだ
「……決定事項だ。やるしかないだろ」
ポツリと言った後、シュンは小さくため息をついた。
「何その溜息…しょうがないだろ?」
俺も言わなければいいのに、思わず言ってしまう
「は?」
その途端
ピリッとした空気が俺とシュンの間に流れる
効きすぎたエスニック料理のスパイスのように
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