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「で…?今日は何してたの?」
すぐ傍の公園に入り、ベンチに並んで座る
エッフェル塔が木の隙間から見えた
「…イタリアまでの切符を買いに来てた」
「あー、ヨーロッパ大会か…こんな可愛い子
1人で行かせるなんて、物騒だな」
「可愛いとか言うな…別に物騒じゃないし。」
「男はみんな獣だから。取って喰われるよ?
それとも俺に喰われに来たの?」
「訳わかんねぇ……」
なんだこのやり取り。
そう思ってると前髪を一房取られる。
予想外の行動に、10cm以上
上にあるリーの顔を凝視する
よく見ると目の下に隈ができていて
少し疲れているように見えた
「……春、覚えておけよ?」
「何を?」
「この大会…ヨーロッパ大会には裏がある。」
どういう、こと…?
そう聞こうと思った瞬間、携帯が鳴った
………エリック、からだ
出るから出ないか迷っていると、リーが勝手に
通話表示をスライドした
「あっ!バッカ『…もしもし、シュン?』
リーとなるべく離れて電話を耳に当てる
「な、なに…」
『シュンを、迎えに来たんだけど…
駅の近くにいるんだ。今どこにいるの?』
駅の近く?
…この公園の近くじゃねぇか
まずい、今来られるのはかなりまずい
「いや、いいよ…俺が行く」
そう答えた瞬間、子ども数名が楽しそうに
笑い声をあげながら目の前を走っていった
その声が聞こえたのか、
『あ、公園?だったら近いや…あと2分くらいだし』
「いい!!!来るな!!」
予想以上にきつい言い方になり、
リーが横でクスリと薄ら笑ったのが聞こえる
俺は電話を耳から話して
日本語でリーに「帰れ」とだけ言った
リーはニヤニヤとしながら「や、だ」と答えた
帰る素振りはまったく見えない
『………シュン、誰かといるの?』
ドキリと心臓が跳ね上がる
鼓動が早くなり、携帯を握る手に力が入る
早くNOと言わなくてはいけないのに
口の中が乾いて声が出なかった
『もしかしてさぁ…』
落ち葉を踏む早歩きな足音が近くなる
「隣にいるのって、俺の兄貴だったりする?」
聞こえた声は電話越しからじゃない。後ろだ。
振り返るとそこには
今まで見たことがないくらい
怒った表情のエリックが…立っていた
「よう、バカ弟」
朗らかに片手を上げるリーを
今すぐぶん殴りたい勢いだった
冷や汗が背中を伝う
…2人を、会わせてしまった
リーと会う約束をしていたと
捉えられても可笑しくない状況
タイミングが悪すぎる
恐る恐る顔を上げると
エリックは…俺の方を見てさえもくれなかった
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