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手紙
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TGV国際線でパリから今回の大会開催地で
あるイタリア 、トリノへは6時間
2列座席でルイとゼンは通路を挟んだ席
俺は1人、窓際の席で外を眺めていた。
朝の5時にパリを出て、今は午前9時。
眠気はピークを迎えていた
チラリと通路を挟んだ席を見ると、
案の定ルイとゼンは静かに寝ていた。
無意識に溜息をつく。
隣に誰かがいないことではない。
そんなことじゃない。
そう、言い聞かせてた。
そういえば……
俺は昨日の小包に入ってたものを鞄から取り出した。
小包にはじいちゃんのメモ帳と、手紙が入っていた。
メモ帳は一通り目を通したけれど、
手紙はまだ読んでいなかった。
昨日の状態で読む気にならなかったからだ。
一体、何が書いてあるんだ?
少し黄ばんでいる封筒を取り出すと、
そこには便箋が2枚入っていた。
桜色の便箋だった。
「手紙…?誰に?」
そこには…懐かしいじいちゃんの
少し右上がりの字でこう書かれていた。
──いつも厨房の前のガラス窓から
可愛らしい目が覗くのを、私は知っているよ。
ごめんね、春……やはり私はお前には
製菓の道を進んで欲しくないと言いつつも
心のどこではパティシエとして生きていく楽しさ、
素晴らしさを知って欲しいのかもしれない。
この手紙を見つける頃、春は何歳だろう?
何をしているんだい?
もし…普通の学校に行き、普通の大学に進み、
お前のやりたいことができているのならば、
この手紙はここでおしまいだ。
けれどね、もしお前が…製菓の道に
歩んでしまったのならば、
この手紙を読む価値がある。
ここで、1枚目は終わっていた。
久々のじいちゃんの言葉に、俺は胸の
高鳴りが抑えきれないまま2枚目に目を通し始めた
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