アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
似ている
-
「嘘でしょ…」
最初に声を出したのはゼンだった
箱の中身は
全部グシャグシャにされていた。
果物も、チョコレートも、他の材料も
もう、使えそうになかった。
「酷いな…」
キュッと唇を噛むニコ。
その姿から…とうてい
彼らがやったとは考えられなかった
「兄ちゃん、なんで、
僕らのテーブルにあったんやろう?」
困ったように兄の腕を引っ張るドニー
「俺らがやったように
見せたかったんちゃう?腹立つなあ!」
自分達のことではないのに、怒って地団駄を
踏むニコを横目に、ひとつひとつ材料を
手で触り、見る
「……ダメだ。使えない。
使えたとしても、かなり少量だ。」
材料の確認をやめ、立ち上がる
うつむくルイと悔しそうに顔を歪めるゼン
……ここまで、なのかもしれない
そう思い、下を向きそうになった俺に
ニコが背中を叩いた
「おっしゃ!これも何ぞの縁、
俺らの材料をわけんで!」
「うん!それがええな兄ちゃん!」
賛同して手を叩く弟
その提案に、思わず目を見開く
「なんで…赤の他人なのに」
今知り合ったばかりなのに
そんなことを、言えるんだろう
単純に疑問に思った
そんな俺にニコはこう言った
「そないな水くさいこと言わんといて!
困ったらお互い様やろ?」
さも当たり前かのように朗らかに笑う彼
「僕らの専門は氷菓、僕ら、グラシエを
目指しとるんよ。使わへんかもしれへんけれど
粉類は今回も大目に持ってきとるから、
シュンさんに是非つこてほしいな」
そう言って微笑むドニー
2人の優しさに、戸惑った。
ついさっき会ったばかりなのに
どうして見ず知らずの人に優しくするんだろうって。
でも…どこか、アイツに似ていた。
明るくて、誰にでも優しくて、ずっと笑顔で……
2人の優しさが、素直に嬉しかった。
俺は、2人に、聞こえるように、
「ありがとう」
そう、言った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
181 / 232