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弾ける
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***
会場に入り、Franceとかかれた調理台まで
来たと同時に、調理開始のブザーが鳴った。
制限時間は3時間の中で、
チーム代表2名がひとつのスイーツを製作
ヨーロッパ大会では今までのように見た目重視ではなく、より味に視点が置かれる。
だからっといって味だけを気にするわけにはいかない。もちろん、短時間の中でもより、美しい見た目の方が点数は高い
それに、製作中の過程も、ヨーロッパ大会から
得点化し、上位2チームがワールド大会へと
進出できる。
「…はぁ……」
目を閉じ、胸に手を当て溜息をつく。
会場の中を見渡すとヨーロッパの国々から
集まったたくさんのパティシエ達と
審査員で溢れかえっていた。
今回の大まかなテーマは信仰心。
その中に必ずパイ生地を使うこと。
パイ生地…
イタリアチームのドニーとニコから材料は
貰ったから、作らないことはない。
けど……
「信仰心……」
ずっと考えても何も出て来なかったテーマ。
…スランプになってから、何を考えても、
スイーツ達は頭の隅に霧のように覆われて
朧げなまま、消えていった。
テーブルの端に手をつき、考える。
周りのチームはチラチラと俺を見ては小さく
笑ったり、小声で話したり…
中には顔を赤くしてずっと見てくるやつさえいた。
そんなに制服にエプロンが珍しいか?
別にシェフコートが正装と決まってないだろ
…1人だけが、物珍しいのか。
他のテーブルは2人で声を掛け会いながら
着々と調理をしていた。
その、光景にも
少し、イライラし始める自分が出てくる
信仰心?
信仰……ってなんだよ
神々や仏を深く、信じること。
んなことわかってるつーの…。
信じてきた、何を?
俺は、
……何を、信じればいい?
信仰……
ずっと、忘れられないもの、
心のどこかに、ずっとあるもの
俺の、信じてる…もの、
「じい、ちゃん……」
日本にいた頃の、田舎の懐かしい記憶
じいちゃんが、必ずいた
日本に……いた…
日本、そうだ……俺は
日本から、来たんだ。
日本……の、信仰心……
その瞬間、
線香花火が最後に落下するように
パチンッと、
何かが頭の中を弾けた。
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